表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/38

20.誤算 ①

あれ以来、ストーカー男の足が遠のいていたが、彼の婚約者との結婚式が週末にあることを、社内の噂で知った。


そのせいなのか、チラチラと私の様子を伺うような視線を女性社員達が頻繁に向けて来る。

休憩室や女子トイレで私が一緒になると、サッと避けられたりするのには、流石にもう慣れた。


あとニ週間で退社するから、それまでの辛抱だ。


自分がいなくても、あの男が来た時の緊急避難場所に使っていいからと、修司の部屋の合鍵を渡されているのも心強い。


自宅に帰るよりもはるかに近いし、徒歩で避難可能なのはありがたい。



ストーカー男を唆したお局様とその仲間は、私が彼の結婚を止める筈だと本気で思い込んでいたらしい。


昨日彼女らに呼び止められた。


「なんで止めないのよ! このまま結婚しちゃっていいわけ?」


容子にそう詰め寄って来た。


「私は一向に構いません。止める理由も必要もありませんから」

「なっ、何を言うの、あなた彼のことを好きなのではなかったの?!」

「まったくはじめから好きでもなんでもありませんし、そういうことは迷惑だからやめて下さいと最初に伝えた筈です」


まだ彼らが婚約をする前にも、


「いくら自分達の思い通りにしたいからと言って、平気で他人をダシに使うような人は、私が最も嫌う人間です」


そのようにお局様とその仲間にはハッキリ言ってあった。


ストーカーの彼にも「そういうやり方をする人は最も嫌いです」とキッパリ言ってあったのに。


彼が容子ちゃんに嫌われるのは嫌だとオロオロしていたらしいのを、大丈夫よとなだめてここまで引っ張って来たのもお局様だった。

二人を婚約まで無理矢理こぎつかせたのも、引っ込みがつかなくなった彼女の脅迫じみたごり押しらしい。


現実に、ここまで話が通じない人が彼以外にもいることが、恐ろしい。


婚約したのは、ダシにしてしまった彼女への責任を取ったのだとてっきり思っていたのに、まったくそうではなかったなんて。


あまりにも婚約者の女性が気の毒に思えて仕方がない。



婚約者の親友が、お局様達の企みに気がついて、なぜか怒りの矛先を私に向けて来たのも解せない。


恐らく、お局様には強く出れないから、怒りの矛先を、お局様よりは言いやすい私に向けて来たのだろう。


つくづく人間というものが醜すぎて嫌になってしまった。


この会社の女性陣にはまともな人はいないのだろうか。

集団ヒステリーの状態に近い。


後ニ週間、耐えねばならないのが苦痛でしかない。


取りあえず、その結婚式が済めば一段落するだろうか。



私がいつになっても結婚しないでくれと言い出さないことが、ストーカーとお局様達にとっては最大の誤算だったようだ。


なぜ好きでもない相手の結婚を止めないとならないのか、さっぱり私には理解できない。


その計画こそが、最初から破綻していることに気がついていないなんて愚か過ぎるとしか言いようがない。


もし真相を知ったらその婚約者、もうすぐ花嫁となる女性はどうなるのか?


彼女に事情を説明して謝罪すれば済むことなどではまったくない。


そこを微塵も想像も配慮もできない人間性の低さ、27歳になっても自分の尻拭いすら自分でできないような、色ボケのハナタレ小僧など、容子には嫌悪と軽蔑しかないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ