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18.重なる記憶 ③

みつわ荘、厳密には元みつわ荘に到着すると、修司は開口一番母屋はどうなっているのか聞いて来たので、今は人に貸していますと答えた。


借り手は床屋の主人で、祖母の古い知り合いだ。


数年振りに訪れたかつての生家は、以前のままだった。


内装は床屋仕様に大分変わってしまったけれど、外観には大きな変化はない。


と言っても、築60年以上経つのだから、この生家だって古民家なのだ。


みつわ荘の前の道幅は狭く、車は通れない。

だから車を気にすることなく、子ども達はこの細い道路でよく遊んでいた。

旅館や保養所の客は、温泉郷入り口にある合同の広い駐車場に車を止めて、目当ての宿まで徒歩で向かう。

奥に向かうほど道は狭くなる。迷路のような細い坂道や階段が多い。


子どもの頃はあまり感じなかったけれど、大人になるとその道の狭さ、広場だと思っていた場所の狭さに驚いてしまう。

こんなに狭かったのかと。


「昔泊まった時に、母屋の前を浴衣を着て歩いている2~3歳くらいの女の子を見たように思うんだけどね。

その子、物凄く上機嫌で、家の前を通り過ぎる人みんなに手を振っていたな。

満面の笑みで俺や姉にまで手を振っていたの、あれはどこの子だったのかな?」

「そっ、それは多分私ですね。コケシのような髪型で、なおかつ服の上から浴衣を羽織っていたので、かなり着ぶくれしていましたよね?」


容子は恥ずかし紛れにまくし立てた。


「はははっ、あれは君だったんだ?」

「その時の写真は家にありますよ。家族には関取って、見るたびにいじられるんですよ」


そのコケシのようなヘアスタイルに幼い容子をしたのは、現在母屋を借りている店主だ。


「ぶはっ、せ、関取って?! いや、そこまでではなかったよ、さすがに」

「いいですよ、フォローしてくれなくても!」

容子は少しむくれた。


竹と紐で格子状に編まれた柵と、その柵からはみ出しているツツジの枝の合間から見え隠れしていた小さな女の子が、今、目の前にいる女性なのだった。


浴衣の柄までは記憶にないが、白と朱色のグラデーションの兵児帯が、ヒラヒラして金魚みたいだったのを修司は覚えていた。



かつてのみつわ荘の別館、母屋の隣だったところは「たかの」という保養所になって、もう18年ほど経つ。

外観も更に何度か手が加えられたのか、昔の面影はほぼなくなっていた。


連休なのにひっそりしていて、人影がないのは、営業していないのだろうか?


寂れてしまった温泉郷なので、経営は厳しいのかもしれない。

忘新年会を泊まりで行う企業も減っているから、個人の客頼みだ。



「みつわ荘が廃業したのを知らなくて、近くに来たついでに寄ってみたら、まるで別物になっていて驚いたよ」

「最後に泊まったのは何歳くらいの時ですか?」

「10歳くらいが最後かな。あまり家族で出掛けない家だったから、余計に思い出深いんだ」

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