表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/33

回復魔法

行方不明になっていた冒険者パーティーのメンバーとキュクロプスの攻撃で、一瞬にしてアイシスとアーニスの前衛戦力2人を失った真円の砂時計。


この危機にすぐにギルバードが動く。

「マリスとサンドラ、クライドはモンスターの相手を。倒さなくてもいいからなんとか時間を稼いでくれ。俺は回復にあたる。カロさんはアーニスをこっちに連れてきてくれ」

ギルバードはそう叫ぶと自身はアイシスの元に駆け寄り、アイシスを抱えて敵から距離をとりつつ、ポーションをふりかけ、そして容態の確認をする。

(心臓を大きく貫かれている。これは単に回復魔法を施すだけでは救えない、今のポーションも追いついてない。……魔法で心臓の役割を代替しながら、心臓を修復と回復を同時にしないと……)


アイシスを診断し終えると、次はカロットワーフが運んできたアーニスにもポーションを振りかけて容態を診る。カロットワーフはちぎれたアーニスの右腕も一緒に回収していた。

(切断面がぐちゃぐちゃだ。止血と合わせて傷口を整えて接合する必要があるな。ポーションの効果で血は止まりつつあるが、これまでの出血量が多すぎる。これも並行処理でないと救えないか)


攻撃、補助、回復いずれのタイプの魔法を扱えるうえ、先程のファイアワークスのように一部の魔法は詠唱破棄による素早い対応で魔導士でありながら後衛だけでなく前衛もこなせる。

云わば何でも出来るギルバードが後衛をしているのは正にこういう時の為なのだが、流石に状況は厳しい。

表層の切り傷や擦り傷、疲労程度であれば通常の回復魔法やポーションを用いて瞬時に回復が期待できるのだが、今回は2人とも重症過ぎて一筋縄ではいかなかった。


(MB、アイシスは心臓機能を代替しながら傷の修復。アーニスはちぎれた腕の傷断面を綺麗にして接合。これらをすべて並行してスタートさせるぞ)

(MB:承知しました)

ギルバードが魔法をうまく制御するべく自身のスキルAIである「MB」と話す。自立型のため今回のように幾つもの魔法を同時に高度に制御しながら使わなければならないときに最適な能力と言える。


「ストロベリークォーツが恵む 大樹の恩 精霊の慈悲で癒しを与えん、ヒューヒール…… 」

(MB:+ブースト)

ギルバードが回復魔法を唱えた後に、MBがブースト(増幅)効果を付加する。両方ともギルバードの魔力が原資となる。


「ストロベリークォーツよ 損なわれた流れを補完し 零れ落ちん生命を拾え、オブザール」

ヒューヒールは回復、オブザールは損耗した内臓や血液の流れを代替する魔法だ。ギルバードはストロベリークォーツ(ピンク色の宝石)の力を利用して回復魔法を使う。

今回の魔法を術式に例えるなら人工心臓で全身の血流を維持している間に心臓の修復作業を行う手術といえる。

それに加えて今回は+ブーストで回復力を強制向上させている。

トレードオフもあって、ブーストは効率が悪くて魔力消費は膨大になる。それでも今は必要だとギルバードは判断した。

 

ギルバードが回復作業に当たる一方でサンドラがキュクロプスと交戦状態に突入する。

サンドラは細身とはいえ自らの体がその陰に隠れられる程の大剣に「大龍牙刀」と命名して愛用している。

その大きさ故に重量は相当なものだが龍人であるサンドラはこれを軽々と振るう。また、大きさを生かして時には盾としても利用する。

刀身には龍の陽刻(ようこく)が施してあり、名前を含めてサンドラの出自である龍牙族への矜持と愛着が伺える。


サンドラは巨体でリーチ差のあるキュクロプス相手に初撃で胴体を狙うのではなく、まず腕や脚を狙って斬りつける。

(よっしゃ、リーチでは劣るが反応速度は俺っちの方が優位や。ホンマなら初撃後にリスク覚悟で更に踏み込んで2撃目3撃目を加えたいとこやけど…今は時間を稼がんとな)

「キュクロプスの攻撃はその巨体に見合った怪力で武器を振り回すだけじゃー。速度はそこそこじゃが………」

モンスター爺ことカロットワーフが助言を言い終えるのを待たずにキュクロプスは手足の傷を気にする素振(そぶ)りすらみせずに棍棒を振り回してサンドラに襲い掛かる。


反応速度で優位に立つサンドラは冷静に打撃を(かわ)すが、棍棒が巻き起こす風に押されて態勢を崩される。そこにキュクロプスの追撃。今度は回避が間に合わない。辛うじて大龍牙刀で前面に出して防御はするものの体ごと弾き飛ばされて壁面に叩き付けられる。

「痛ってぇー」

サンドラが背中をさすりながら痛みをこらえて立ち上がる。


「速度はそこそこじゃが、振り回す武器が大風を巻き起こすので注意が必要じゃ。あと耐久力もかなりのもので多少の傷をもろともせずに平気で反撃してくる。と言いかけたんじゃが……」

カロットワーフはバツが悪そうに言った。

「また事後かい。カロ爺ぃー、いい加減にせんと爺じゃなくてカロ事後って呼ぶで」

サンドラが上手くないジョークを言ったもののアイシス、アーニスが重体という状況と合わさって誰も笑わない。リアクションもゼロ。


その間もギルバードはアイシスとアーニスの回復を同時進行で行っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ