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方舟ドラゴン

デスナイトとサンダーバードが湧き出してくる青と黒のモンスターボックスを爆炎で包み、燃やし尽くしたのを確認するとギルバードは前に突き出していた両腕を下ろした。

その後、消耗した魔力を補うためカロットワーフから受け取ったマジックポーションを飲み干した。

(カロさんは回復魔法に加えて俺が前線で大魔法を使う事まで読めてたんだろうな)

ギルバードは上空に浮いている方舟ドラゴンを見ながら防御領域を解除した。

「さあマリス、サンドラ。クライマックスといこうか」


方舟ドラゴンが大きく羽ばたくと強風が吹き荒れる。大きな口を開けて黒い霧を吐き出すと雨雲が生成され、大雨が降りだした。

この雨で勢いを失っていた残り火が完全に鎮火した。

「ギル、もっと早く雨を降らされてたらモンスターボックスまで焼き付きすのは難しかったんちゃうか?」

「かもな。ファイアワークスレベルなら無効化されて魔法の無駄撃ちになりそうだな」

「あいつら仲悪いんかな」

「それ以前に意思疎通そのものが無さそうに見えますね」

ギルバード、サンドラ、マリスの束の間の雑談だった。


方舟ドラゴンは黒い霧を吐き続ける。雨は更に激しくなりあっという間に地底湖の水が溢れ出す。

やがて洪水となり真円の砂時計一行の足元を水で満たしていく。

「台風に洪水、確かに災害を(つかさど)っっているようじゃ」

「ん、なにそれ?」

「ああ、アイシスは意識が朦朧としてて覚えてないかもしれんが、奴を呼び寄せたロープロスとかいう奴が言っておったんじゃ。方舟ドラゴンは災害を(つかさど)るとな」


「とりあえず足場を作るわ。……アイスブレス!」

アイシスが自分達の足元に大きな氷を作り、洪水の濁流にに飲み込まれるのを防ぐ。

ギルバード、マリス、サンドラの3人は少し流されたもののそれぞれ岩場や樹木といった高所に上がった。ずぶ濡れになったがダンジョン内の比較的暖かな気候のため、凍えたりせずに済んでいる。

ひとまず水から逃れた一行だったが今度は津波が襲う。

氷である程度足場を自由に広げたり、高さを確保できるアイシスとそのそばにいるカロットワーフ、アーニスはなんとか津波の直撃を回避したが、移動が容易でないギルバード、サンドラ、マリスはもろに被る羽目になった。


「幾多の星を思う 遠い翡翠の大海を巡る旅 鳥のように空を舞う、フライスル」

津波に巻き込まれながらもギルバードが飛行魔法を詠唱して体を宙に浮かせて水から脱出する。まず1番近くにいたマリスを、続けてサンドラの手を取って水から引っ張り上げる。

「ギル、ありがとう」

「ゴホッゴホッ……、あ…んがと。引き上げて貰っといてアレやけど、どうせなら津波が来る前に飛行魔法を使ってくれたら水飲まずに済んだんやけど……」

しこたま水を飲んだサンドラが咳き込みながらギルに尋ねた。

「すまんな。飛行魔法は苦手なんで咄嗟(とっさ)の対応が出来なかったんだよ。今も飛行と言いながら、なんとか宙に浮いているだけの状態なんだよ。このままだと反撃も難しいし、アイシスたちと合流した方が良さそうだ」

 

ギルバードがアイシスとの合流方法を思案しているところ、方舟ドラゴンは攻撃の手を緩めない。両の目が光り、それまで吐き出していたのは黒い霧だったが白い霧に変わり、強風が一瞬止まる。

マリスが耳鳴りを、アーニスが耳の痛みを訴えた。

(気圧が変化している?)

異変に気付いたギルバードが手を打つ。

(今できることは………)


引っ張り上げていた手を振り回して遠心力を利用してマリスとサンドラをぶん投げる。

少しでも近づけるべくアイシス達のいる方向に投げたが、全く届いておらず2人とも洪水の水に落ちた。

「ギル、なにすんねん!?」

投げられて水に落とされたサンドラが悪態ついた瞬間、竜巻がギルバードを襲う。


竜巻としては大規模なものとはいえないが、威力は強くギルバードの体を上空に巻き上げ、振り回し、最後は投げ出されて側壁に身体を強打する。

「ぐはっ」という声が洩れて、そのまま壁をずるずると引き擦るように落ちていく。

途中、壁のどこかに引っ掛かったのか、水没はせずにすんだが、ギルバードは意識を失っていた。


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