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第二話 マネージャー(下僕)

「あなたに求めることは二つ。とにかく強くなることと、私の適性を伸ばすこと」


 ずい、とルイの前に指を突き出し、要求に合わせて2本目の指を立てたヒナタはなんとも不敵な笑みを浮かべていた。ルイはその指先を見つめ、次にヒナタの顔を見てから口を開く。


「あ、あの、ヒナタさん……?」

「なぁに?」

「俺を、マネージャーにする理由って……?」


 ヒナタは目を瞬かせて、次の瞬間には蕩けるような極上の笑みを見せた。ワンフレームごとにどこで切り取っても美しくなるだろうその所作からは、思いもよらぬ言葉が放たれる。


「私、下僕が欲しかったの」

「げぼく」

「私に傅いて私を褒め称えて私のために命を張って私のために生き残れる――そんな下僕が欲しかったの」

「げぼく」


 花が綻ぶような笑みとは、まさにこのことだ。何とも綺麗な笑みを浮かべたヒナタの顔はまるで恥じらいながら告白する少女のそれである。いや、言ってることは全く可愛くないのだが。とにかくあまりにも可愛すぎる。


「その上、あなたなら私の能力を完璧に把握してくれるでしょう? だから決めたの、下僕(マネージャー)になって」


 今更マネージャーと言われても、その真意が下僕であることを知っているルイはヒク、と顔を引き攣らせることしかできなかった。しかし同時に思う。全世界が見たがる彼女の全てを見られるのも事実だ、と。


「……その、お、俺で、いいなら……」

「俺でいいなら? 私、謙遜は嫌い。私が信じられないの?」


 その言葉に、ルイは虚をつかれたように硬直し、たっぷりの間をおいてヒナタに問いかけた。


「……俺を信じてくれるの?」

「ええ、今のところは合格」


 そう言って目を細めた彼女は何とも愛らしく、ルイは咄嗟に目を背ける。だってこんな顔の映像、どこにも残ってなかった!!


「ちょっと待ってごめん! 俺結構限界オタクだからヒナタちゃんの顔間近で見た上俺のために笑ってくれるなんて心臓が持たないからちょっと待って!!!!」

「そこは慣れてもらわないと困るかな〜。これからは宿も野宿も一緒なんだから」

「えっ!?」


 ヒナタはくるりと身を翻し、そのままルイの手を引いた。


「あっ、まっ、手、手!!」

「これくらい慣れてよね。これからチーム組むんだから」

「あの、でも」


 ヒナタは、向き直ってルイの目を見つめた。うっ、と言葉に詰まったルイが視線を泳がせ、そして再びヒナタを見る。目が合った瞬間に、彼女は口を開いた


「でももだってもなし。私はあなたを選んだの。

 あなたは、私を選んでくれないの?」

「選ばないわけがない」


 個レスをもらったルイは、理性を飛ばし食い気味かつ大変流暢にそう言った。


「ん。ありがとう」


 目を細め、柔らかに微笑んだヒナタは、どこにでもいる女の子のように見えた。


「そうそう! 早くギルドに行かないと! 18時には閉まっちゃうよ。今日はとりあえず私が奢るから、登録した後ご飯食べながら色々話そ!」

「あ、は、はい! よろしくお願いします!」

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