いやなやつ!?!?
今日もきょうとてダンジョンに潜るわけだが…
「おい雷雲! いつまでぼさっとしてんだ!?!? はやくドロップアイテム拾え!!」
「あ…わ、わりぃ」
オレの冒険者ランクはF。自分自身そのランクに納得はいっていないが、仕方ないとは思っている。
理由は単純で、クソカスナメクジの能力によって力がないからだ。スキル『進化』は謎めいていて、オレでさえその全容を把握できていない。
巷ではFxckのFランク野郎だなんて呼ばれている。
そして突然! ダンジョン内に血の引くような轟音が鳴り響いた。
「なっなんだ?!」
声の主は段々と近づいて来て、やがてその姿を現した。
褐色の薄汚れた肌に、その巨大に似つかない剛腕。殺意を隠すことなく両目に宿し、いまにも殺さんと睨みつけるその化け物は、一瞬で隣にいた仲間を粉砕した。
「う、うわぁー!!!」
走り出すリーダーに続いて、三人も駆ける。恐怖のあまり振り返ることなくただ走る。仲間の声が少なくなった事実なんて耳に入らない。
「あ、明かりだ! 出口まで走れ!!」
苦しい呼吸を無視してひたすらに全力で走る。止まれば死ぬのはわかりきっているから。
あと少し、出口に差し掛かったあたりでオレは更なる絶望の淵に叩き落とされることとなった。