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第54話 プロスクリ王国の侵攻

「ご報告いたします! 東部二十の村を制圧! 召喚師の影響が大きくカシオン軍は各地からの退却しております!」


 側近からの報告を聞きプロスクリ王国の王がほくそ笑んだ。


「はは、圧倒的ではないか我が軍は。やはりあの召喚師たちに任せたのは正解だったか」

 

 愉快で仕方ないと言った顔を見せる国王。だが同席した将軍の一人が難しい顔を見せる。


「どうしたそんな顔をして?」

「いえ、一つ気になることが。確かに我が軍の優位は揺るぎないかと思われますがカシオン軍の被害が少なすぎる気もするのです」

 

 確かに報告どおりならばめざましいほどの戦果と言えた。だが死傷者の数が少なく更に言えば制圧された村の殆どは兵たちが到着した頃には蛻の殻だったという。それもあってか非戦闘員に至ってはカシオン共和国の被害はゼロなのである。


 これは本来ありえないことだ。その為、報告ミスも疑ったが、だとしても未だゼロは異常だ。


「ふん、奴らがそれだけ臆病者ということだ。亜人も平等などと抜かす国のやることだ。戦いのやり方よりも逃げるやり方の方が広く浸透しているのだろう。だがそんなものは長く続かん。王国軍の力は勿論、召喚師の力は絶大なのだからな」


 将軍の発言を鼻で笑い飛ばすと王はそう返した。確かにその通りだと考える側近だが、それでも将軍は胸騒ぎが収まらないでいた――





◇◆◇

 

「全く召喚師様々だな」

「こっちの被害は未だ出ていない。召喚魔法を見せるだけでカシオンの奴ら尻尾を巻いて逃げてるんだからな」

「ま、逆に張り合いがないが」


 プロスクリ軍の兵士や騎士が揃ってカシオン軍の不甲斐なさを笑い飛ばした。その声を聞きながらご満悦な様子なのは召喚師を束ねる長であるドルク・サモナンであった。


「我ら召喚師の力をまざまざと見せつける結果になったようだな」

「しかし父様。どうにも腑に落ちません。あまりに簡単過ぎる」


 ドルクの横で怪訝そうにしていたのはその息子であるヘルト・サモナンであった。彼もまたここまでの快進撃に違和感を覚える一人であった。


「ヘルトは心配性ですね。何の問題もありませんよ。そもそもここカシオンには召喚師は存在しない、つまり召喚魔法が何なのかもわかっていない。だからこそ私たちの魔法に恐れ慄き何も出来ずにいるのでしょう」

 

 そう言って微笑んだのはドルクの妻でありヘルトの母であるデルズ・サモナン――三人は親子でこの戦争に臨んでいた。


「しかしカシオンの冒険者が魔族を倒したというのも事実。しかもその際に召喚魔法が使われた形跡があると言われているのは何故なのか」


 さらなる疑問を口にするヘルトであった。確かにカシオン共和国に召喚師が存在するという話はまことしやかに囁かれていた。


「気にしすぎだ。召喚魔法は我ら一族のみが扱える力。他に使えるものなど存在しない」

「――確かにそうですが」


 ヘルトもそれはわかっていた。だが不安が拭えずにいた。そして実は一人だけ僅かだが可能性があった。召喚師の村で育ちながらカシオン共和国に身を置く存在――血を分けた兄であるマークの事を。


「いや、ありえないか……」


 だがすぐに頭を振って考えを打ち消した。そうマークは死んだ、そう父であるドルクから聞いていた。それにマークは落ちこぼれだ。召喚魔法と言っても標識召喚などという使い物にならない物しか扱えない。


 例え生きていたとしても脅威になどなりえないのだから。


「心配することなどなにもない。それに我々とて力の一端を見せているに過ぎないのだからな」


 そうドルクが得意がった。


「召喚師様の言う通りだ。しかしこれならわざわざあの気色悪い魔族どもを利用する必要はなかったな」

「確かにな。そういえばあの魔族連中はどうしてるんだ?」

「確か南部で適当に暴れてもらってる筈だがな」

「ま、所詮あいつらは捨て駒だがな」

「とは言え個々の能力はそれなりに高いからな。精々かき乱してくれってな」


 そんなことを話し笑い合うプロスクリ軍の面々だが――しかし彼らは知らなかった。追い詰めていると思い込んでいるが実は既にカシオン共和国の罠に掛かっていることを――

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