第51話 判明したブレブの依頼者
「まさか、この私が、こんなところ、で――」
レーザーに呑まれたブレブの側に行くと最後にそれだけ言い残しブレブが息を引き取った。全身から煙が上がっていて覚醒した標識の力がとんでもない物であることを示していた。
「なんとか倒せたね」
「これもマークのおかげにゃ。あたしだけならとても太刀打ち出来なかったにゃ」
ブレブの亡骸を見ながらフェレスが言った。だけどそれは僕からしても一緒だよ。
「僕の方こそフェレスがいなかったら新しい標識を取得することも出来なかった。時間を稼いでくれてありがとうねフェレス」
「な、なにか改めてそう言われると照れるにゃ」
フェレスの頬が赤く染まっていた。何か言ってて僕も照れくさくなってきた。
「でも、そう考えるとあたしたちいいコンビだと思うにゃ」
「うん! それは僕もハッキリ思うよ」
互いに笑顔を向けあった。改めてフェレスと出会えてよかったと思う。
「この後のことだけど、ギルドには報告しないとね」
「それはそうにゃ。けど、こいつはどうしてこんな真似したのかにゃ?」
「確かにそうだね。もしかしたら調べたらなにか出てくるかな?」
ブレブは気になることこそ言っていたけどハッキリと何が目的か言っていたわけじゃない。ただ僕の推測には反応していた。
誰かに雇われたのは間違いないしもしかしたらと考えていることはある。
だから僕はブレブの死体をチェックして何か残っていないか探してみた。するとブレブの持ち物の中から小さな筒が出てきた。
「これに何か入っているかにゃ?」
「多分ね。だけど普通には開かないみたいだ。鍵が掛かってる?」
しかもただの鍵じゃなさそうだ。魔法で封じるタイプな気がする。
「とにかく一旦冒険者ギルドに報告しにいかないとね」
「そうにゃ! 急ぐにゃ!」
幸いまだ日が出ている時間だ。ブレブとの戦いで疲れがないと言えば嘘になるけど、そんなことを言っている場合じゃない気がする。
だから僕たちは急いでギルドに戻ってギルドマスターのダンバルを呼んでもらって報告した。結果僕たちはギルドマスターの部屋で話をすることになったんだ。
「まさかブレブが魔族だったとは思いませんでしたよ。確かにアグレイが単独でやるには話が大ごとすぎるとは思いましたけどね」
ダンバルが額を押さえながら考えを口にした。ブレブの正体を知ったことで精神的にはかなり疲れてそうだ。
ただでさえゴブリンの件でてんやわんやだっただろうからね。
「とにかく死体を確認しに向かった調査班の報告を待ちますが、君たちが嘘をついているとは思えませんからね」
そういいつつダンバルは僕たちが前もって渡しておいた金属製の筒を手に取った。
「後はこれの中身ですね。見たところ魔法で施錠されてるようですが、これなら何とかなりそうです」
「マスターが自ら解くのかにゃ?」
「えぇ。実はこの手のを解除するのは得意なんですよ」
そう言って笑いつつダンバル筒を確認する。ぶつぶつと呟きながらあれがそれで、などと考えていたけど、数分後には筒に掛かっていた鍵を解いてしまったんだ。
「これで中身が確認出来ますね」
「随分とあっさりにゃん」
「うん。凄いよね」
「フフッ、実はこれの鍵は魔族特有の術式が施されていたのですけどね。私は魔族の研究もしているのでその知識が役立ちました」
得意な顔を見せつつ、ダンバルが中身を取り出した。筒に入っていたのは丸まった状態で紐で縛られた書状のようだった。
ダンバルは紐を解き書状の中身を確認したのだけど――
「これは……驚きましたね。魔族にこれを依頼したのはなんと国家――プロスクリ王国のようです」
ダンバルから明かされた書状の送り主、それを聞いて僕は驚くと同時に、やっぱりかという思いがあったんだ――




