第48話 ブレブの正体
「まさか魔族……」
思わず呟いてしまった。そうブレブの特徴は魔族に一致した。僕が育った村でも聞いたことがある。魔族について、かつて魔王が君臨していた時代、人間と魔族の間で熾烈な戦いが繰り広げられていた。
だけどその魔王も随分昔に倒されたという話。もっとも魔王が倒されても魔族は残っていて今はひっそりと暮らしているとも聞いた気がしたけど。
「そんな……どうして魔族がこんなところにいるにゃん?」
「フンッ。お前らがそれを聞いたところでどうしようもないだろうが、仕事とだけ言っておくか」
ブレブがフェレスの疑問に答えた。正体を明かしたことで性格も変わってるように思える。
それにしても仕事? 魔族がわざわざこんなところまで来るなてまさか――
「もしかしてまた魔王が現れたとか?」
「にゃっ! だったら大変にゃ!」
目の前のブレブの発言につい魔王の影がちらついてしまった。勿論昔の話として知ってるだけなんだけどね。
「――魔族はもう魔王なんかあてにはしてないさ」
しかしブレブは不満そうに答えた。かつては魔族を率いていた魔王に対して今は嫌悪感を抱いてそうでもある。
「魔王もいないのにゴブリン使って何を考えてるにゃん」
フェレスが不満そうに言った。魔族の行動は魔王の影響に寄るものというイメージが強いからだと思う。僕もそんな気がしちゃうし。
「魔王魔王うるさい連中だ。ま、いいだろう。今は魔族も考え方が変わったのさ。魔王なんかを祀り上げて属するよりも、もっと自分たちの能力を活かして上手く立ち回ったほうがいいとな」
得々とブレブが語りだした。それにしても自分たちの能力を活かして立ち回る? それがゴブリンの件と関係しているんだ。
でもそれがどうゴブリンと繋がるのか――いや待てよ。そうだ僕はこれと似たような事をしている一族を知っている。もしそうなら――
「もしかしてどこかから雇われて今回のことを――」
「フンッ。中々勘が鋭いようだな。だがそこまでだ」
そう言ってブレブが剣を振った。闇色の斬撃が僕たちに向けて飛んでくる。
「標識召喚・通行止め!」
僕の召喚によって闇の斬撃が遮断された。これは向こうは完全にやる気だ。話もここまでということだね――
「一体どういうことにゃ。どうしてマークが狙われなきゃいけなかったにゃ」
「そんなの決まっているだろ。強いからだ。特に本来この国にいない召喚師だというのだからな。仕事に影響する邪魔者は早めに排除する必要がある」
ブレブが答えた。召喚師としての強さを認めてもらえるなんてこんなことがなければ喜んだところだけど、今は寧ろ面倒なことになってしまってる。
たださっきの発言――この国、なぜそんなことを言ったのか。気にし過ぎ? いやまさか……魔族の狙いは国に混乱を生じさせることなのか。
もしそうならそれこそ魔王復活を考えたいとこなんだけどそうじゃないとブレブは言っていた。さっきの態度から見てそれは間違いないと思う。
そんなことを考えていたらブレブが右手を差し上げかと思えば漆黒の剣がが大量に空中に浮かび上がった。
「お前の力は大したものだが、これだけの数に対処することは不可能だろう」
ブレブが口角を吊り上げる。これまで僕の標識召喚を見てきたブレブの一つの回答がこれってことだね。さてどうしようか――




