表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/61

第44話 アグレイの奥の手

「くそっ! 聞いてねぇぞこんなもん!」


 アグレイが吐き捨てるように言って走り去ってしまった。どうやらゴブリンジャイアントは奴にとって切り札の魔物だったようだ。


 しかし敵を倒したのはいいが僕は完全に閉じ込められた状態だ。普通に考えれば誰かの助けを待つほかない状況。


 だけど、僕には一つ手があった。


「標識召喚・非常口――」


 召喚魔法によって人が出口に駆け込むような表示のある標識が出現した。この標識は指定した場所にくっつくタイプだ。


 そしてくっついた場所の下に非常口が設けられる。あまりに厚い壁だと厳しいようだけどこの格子ぐらいなら扉を使って抜ける事が通り抜ける事が可能だ。


 標識を召喚してから更に扉を開けて抜ける手間があるので安全を確保してからでないと難しいけど今なら問題ない。


 扉を開けて抜け出た後で標識を消しアグレイを追うことにする。あいつ一人が独断でこれをやったとは思えない。


 裏で糸を引いているのがいるとみて間違いないと思う。


 僕は速度規制の標識を召喚。洞窟内で速度を出しすぎても危険なので30km速度で移動する。


 これでもアグレイに追いつくには十分な速度だろう。


「追いついたよ」

「チッ!」


 アグレイに追いつくと舌打ち混じりに僕を睨んできた。


「言いたいことも聞きたいことも山ほどあるけど先ずは一緒に来てもらうよ」

「……一緒にか。悪いがそう思い通りにいかせないぜ」


 流石にもう観念してくれるかと考えた僕だったけど甘かったようだ。


「できれば避けたかった奥の手だが仕方ねぇ――魔物化!」


 アグレイが声を上げると全身に鱗が生え肌の色も浅黒く変化していく。


 目がやたらギョロッとした物となり、尻尾さえ生えてきた。


「キシェエエェエエエエエエェエ!」


 変貌を遂げたアグレイは奇声を上げ壁から壁へと跳ね回りながら高速で距離を詰めてきた。


 身体能力が大幅に向上している。この動き僕ではまともに対応出来ない。


 ただ、奇声を上げ続けているあたり大幅な肉体強化と引き換えに理性は失われているようだ。


 とは言えこのまま普通に戦っていては分が悪い。だけど僕にはこれがある。


「標識召喚・徐行!」


 召喚された標識が立つと途端にアグレイの動きが遅くなった。この標識は範囲内の相手の動きを強制的に遅く出来る。


 どれだけ速く動けようがこの洗礼からは逃れられない。その後僕はアグレイの正面に回った。


 召喚師の僕は肉体的には非力だ。だけどそんな僕でも簡単に回り込めるほどに今のアグレイは遅く余裕を持って追加の魔法を行使出来た。


「標識召喚・危険!」


 !マークの刻まれた標識をアグレイの目の前に立てた。アグレイは強制的にこの標識を目にすることとなり途端に地面が盛り上がりまるでワニが噛みつくが如く左右から挟み込みアグレイを押しつぶした。


「グガッ!?」

 

 苦しげな声を上げアグレイが地面に倒れた。すると魔物化していた肉体がみるみる内にもとに戻っていく。


 どうやら魔物化の効果が切れたようだ。アグレイが悔しそうに歯噛みしている。


「く、くそ、力の副作用が……」


 アグレイのつぶやきから察するに魔物化には解けた後の代償があったようだ。本来使うつもりがなかったというのはこの事があったからなのだと思う。


「ここまできたらもう観念することだね。今から仲間を探してくるから――」


 その時だった、突如影が僕の横を抜けアグレイに飛びかかった。そのまま喉笛に噛みついたのは一匹の黒い狼だ。


「標識召喚――」


 慌てて召喚魔法を行使しようとしたけど狼はアグレイを噛んですぐに地面に溶け込むようにして消えてしまったのだ。


 あまりに一瞬のことで対応しきれなかった。アグレイの様子を見たが喉を噛みちぎられていて目から完全に光が消失していた。


 アグレイは死んだ。だけど、何故狼が突然……今回のゴブリン騒動といい謎は深まるばかりだ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ