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第41話 疑いは晴れた?

 横穴はアグレイが先頭を歩いてくれた。罠を察したりするのは彼が得意だからだ。


「――この穴は特に問題なさそうだな」


 一番奥までたどり着いたところでアグレイがそう判断した。ちょっとした罠はあったようだがそれはアグレイが解除してくれた。


「――戻るぞ」


 それだけ言って再びアグレイが前を歩く。必要最低限なセリフしか語らないが、前のように敵対的なセリフを口にすることはなかった。


 やはりブレブの言うようにゴブリンロードを倒したのが大きかったのかもしれない。ゴブリンもほぼ退治されたのもあって僕を疑う理由がなくなったのだろう。


 だからといってアグレイが謝ることはなかったがこれも致し方なしか。もしかしたら彼は彼なりに皆の事を思って憎まれ役を買ってくれていたのかもしれない。


「ちょっと待て」


 横穴を調べてから戻るとアグレイが奥の壁に目を向けて声を上げた。


 ジッと壁を見つめた後、にじり寄るように壁に近づき壁面に耳を当てコンコンっと右手で壁を叩いた。


「ここだな――」


 そう呟きアグレイが壁の一部を押し込むと壁がずれ隠し通路が姿を見せた。


「どうやらゴブリンが何かを隠したようだな。ロードが指示した可能性も高いだろう」


 隠し通路を覗き込みながらアグレイが推察した内容を話してくれた。確かにこの手の隠し通路は何かを隠すために仕掛けられたとしか思えない。


「それなら戻って先ず報告したほうがいいよね」

「何言ってるんだ? 俺らは手分けして調査してるんだぞ。それなのにただ隠し通路がありましたで終わらせられるわけないだろう。子どもの使いじゃねえんだからな」


 僕の意見に対して呆れたような反応をアグレイが見せた。確かに僕たちの目的はチェックではあるのだけど――


「報告は中をチェックしてからだ行くぞ」


 アグレイが僕に呼びかけて穴の中に入っていった。流石に僕だけが勝手に戻るわけにはいかない。


 アグレイの後ろからついていく。直線の穴が続いていた。しかしそれも程なくしてちょっとした空間にたどり着いた。


「見ろ宝箱だ」


 奥の壁際に宝箱が設置されていた。アグレイが指をさし周囲を確認した後宝箱に近づいていく。


「念のため周囲を警戒しておいてくれ。罠があれば俺が解除する」

「わかりました」


 アグレイの後ろで警戒しておく。アグレイは宝箱を調べて鍵穴にピックを突っ込んだ。なにかカチャカチャと作業している。


――カチッ。


「よし開いたぞ」


 どうやら罠の解除は終わったようだ。アグレイが宝箱を少しずつ開けていくと――突如地面が崩れた。突然の浮遊感。


 支えるものを失い、僕の身が真っ逆さまに落下した。


 アグレイも一緒に落ちていたのを確認した。罠の解除に失敗したのだろうか。


 だがそれを責めるわけにはいかないだろう。どんなに腕のある人間でもミスはある。


 それよりもこの状況だ。自由落下からどのぐらい経ったか、それでいてあとどれぐらいで地面に到着するか。


 どちらにしても無傷とはいかないだろう。だからといって死ぬわけにもいかない。とにかく意識だけは保つ必要がある。


 そんなことを考えている内に地面が見えた気がした。何とか足を倒して全身で地面に落下した。


 ダメージを分散させるなら接地面が広い方がいい。それでも稲妻に撃たれたかのような衝撃が全身を駆け巡る。


 息が止まった。喉奥から血が込み上げてくる。左足と右腕は折れたかもしれない。


「ぐっ……」


 何とか意識は保てた。左足と右腕が特に痛み熱を感じた。


「おい。大丈夫か?」


 決して大丈夫とは言えない僕とは違いアグレイは本当に同じ場所から落ちたのか? と疑問に思える程声に余裕があった。


「悪いが俺は薬を持ってない。意識はありそうだが動けないならここで待ってて貰う他無いな」


 アグレイが僕の様子を見ながら淡々と述べた。一応容態を気にしてくれてはいるようだがあくまで仕事の一環としてかもしれない。


 どちらにせよ迷惑は掛けられない。意識が残せたは幸いだった。


「ひょ、標識召喚・荷物預かり所」


 召喚魔法を行使した。首だけをアグレイに向けて声をかける。


「手を貸して貰えますか? その箱みたいのまでいければ何とかなるので」

「……こうか」


 アグレイに持ち上げられパネルの前に立った。操作して荷物から事前に購入しておいたポーションを取り出した。


 それを直接折れた腕と足に掛ける。


「ふぅ――多少はマシになりました」


 どうやら綺麗な折れ方をしていたようだ。ポーションとはいえあまり複雑な折れ方だと完全にくっつけるのは厳しいのだが多少は痛むが何とか手足が動かせる程にはなっている。


 後は残ったポーションを直接口にし全身の痛みにも効果を発揮させた。


「もう大丈夫ですよ」


 アグレイの手から離れてそう伝えた。


「……厄介だな」

「え? あ、たしかにそうですね。まさかこんな下まで落ちるなんて」


 アグレイが眉間に皺を寄せて言った。僕も上を見てそれに同調した。どうやら上まで結構距離があるようだ。これでは昇るのは難しいだろう――

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