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第37話 作戦開始

「では急いでゴブリンを引き付けつつ目的地へ向かいましょう」

「待って。急いでと言っても私、足はそんな速くないからね」


 僕が呼びかけるとマジュは念を押すように自分の足について伝えてきた。


 勿論それについてもしっかり考えはある。


「問題ないです。ただウルは抱えて貰ってもいいですか?」

「え? まぁそれぐらいなら」


 僕がお願いするとマジュが両手でウルを抱きかかえた。


「結構重たいのね。でも、はぁ何かこの毛並み癒やされるぅ」

「ガウ」


 ウルに顔を埋めるマジュ。ウルも大人しいものだ。


「では――標識召喚!」

 

 僕は召喚魔法で最低時速の標識を召喚した。洞窟内なので30kmにしておいた。


「では一緒にこの標識を掴んでください」

「こう? て、キャッ!」

 

 標識が動き出すと驚いたのかマジュが声を上げた。とは言え振り落とされるようなことはないはずだ。


「安心してください。速度は出ますが安全なので」

「あ、そういえば揺れもない」

「ガウッ」


 マジュもウルも快適そうだ。ただ、ここからは注意がいる。


「ゴブリンに気づかれました。絶対に手は放さないで下さいね」

「も、勿論よ。あんなゴブリンの群れの中に落とされるなんてゾッとしないもの!」


 マジュが青ざめた顔で言った。女性にとってゴブリンは忌むべき魔物でもある。


 僕たちに気がついたことでゴブリンの群れが一気に騒がしくなった。


 ゴブリンロードも声を張り上げている。だがこれでいい。標識を上手く操作して僕は件の横穴に向かった。


「ちょ、この先行き止まりじゃない。大丈夫なの?」

「むしろそれが狙いです。ウルこの先罠はあるかな?」

「――ガウ!」


 僕が問いかけると少ししてウルが地面に向けて吠えた。標識を止めてマジュにウルを一旦下ろすようお願いする。


「ガウガウ!」


 するとウルが地面の一部を飛び越え、こっちを振り返って吠えた。なるほどそこに――


「僕たちも飛び越えよう。そこにきっと罠がある」

「う、大した距離じゃないけど――」


 緊張した面持ちのマジュを促し一緒に飛んだ。罠は回避出来たけどやはりその当たりは突き当りだ。


「これ以上逃げられない! ゴブリンも来てるよ」


 マジュが焦った口調で叫ぶ。一直線の道に押し寄せるようにゴブリンやホブゴブリンが迫ってきていた。


 罠のことを知ってるのか先頭のゴブリンもウルが察した場所を飛び越えてくる。


 このままだと追い詰められて終わる。勿論そんなことはさせないが。


「標識召喚・一方通行、そして火気厳禁!」


 僕は同時に二つ標識を召喚した。一方通行は標識を境界に指定した方向にしか進めなくなる。


「ギッ!?」

「ギヤッ?」


 案の定罠を飛び越えた筈のゴブリンが踵を返しその結果自ら落とし穴にハマった。他のゴブリンも周り右をして逆方向に戻っていく。


「これって……」

「今だよ! 火魔法をお願い!」

「え? わ、わかったわ! 火魔法・アーテムフォイア!」


 マジュが魔法を行使した。すると杖から炎が吹き出て横穴を覆うようにして一直線に突き進んだ。引きかえしていたゴブリンもホブゴブリンも炎に巻き込まれ黒焦げになって行く。


「嘘……こんなに威力が出るなんて。これもマークが?」

「うん。一方通行は指定した方向にしか進めなくなる効果がある。これは魔法も対象なんだ。そこに火気厳禁の標識――これは本来注意喚起なんだけど標識の効果内で火を起こすと勢いが増すんだ」


 だからマジュの火魔法も威力が跳ね上がっていた。僕にとっては狙い通りでもある。


 直線に伸びている横穴はこの二つの標識とマジュの魔法を活かすに最適だったと言えるだろう。


 さて、後はこの調子でゴブリンの群れを駆逐していくだけだ。

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