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第8話:この世界でも王族にされてしまうらしい

 この世界には、ダンジョンと言うものがあるらしい。

 恒久的にその場に存在するもの、魔力によって突発的に現れるもの。

 それらに共通するものは、ダンジョン内には魔物が溢れ、最奥にはダンジョンボスというものが居るらしい。

 そして、未だに解明されてない宝箱の出現。

 当りの宝箱をゲットできた者は、一攫千金も夢ではないらしい。


「私、いつかはそのダンジョンに挑戦したいなって思ってるんですよ」


 俺の隣りで夢を語っているのは、先日助けた少女のレナだ。

 水色の長い髪を後ろで束ね、革の胸当てを身につけている。

 上半身はそれでいいが、下は膝上のミニスカートと革のブーツのみ。防御面で不安の残る軽装だな。


 彼女は、ダンジョンの説明をしてくれた後、薬草採集に出かけていった。

 ゴブリンも元に戻したし、彼女をなるべく襲わないようにと言い聞かせたから大丈夫だろう。


 我は今度こそゴブリン討伐を成功させるべく、受付へと向かった。


「お待ちしておりました! リガード様!」

「ぬ?」


 リセラという娘、昨日までとは違い、明るい声と凄い笑顔ではないか。

 我が王族関係にあると確認が取れたのだろうか?


「まさか、リガード様が他国の王族で」


 他国ではないが大筋は間違ってないな。


「ナテュア王女様の婚約者だったなんて!」

「……いや、ちょっと待て」


 この世界の魔王を倒すという願いを受け、我が異世界の魔王だと素性を明かしたが、どうして娘との婚約関係になっているのだ?

 そもそも、ナテュアは5歳であったであろう。


「それは誰から聞いたのだ?」

「ギルド長から王城に問い合わせたら、この手紙が送られてきたんですよ! しっかりと王紋が刻印されている、正式な書状ですよ!」


 手紙を受け取り、内容を確認する。


 決して怒らすな。クエストは最優先に優遇すること。有能な人材を護衛につけよ。


 まあ、そんなことが書いてあるが、護衛は邪魔なだけだ。我の攻撃に巻き込まれて粉々になってしまうぞ。

 最後に、我が他国の王族で、ナテュアの婚約者候補であることが書かれていた。

 まだ、候補……である。

 魔王討伐の見返りに娘を差しだすとはな。こんなもの、大事なのは本人の意思であろうに。


「まあ、いい。ゴブリン討伐にいってくる」

「頑張ってください!」




 森の中に入り、サクサクとゴブリンを5匹斬り倒した。

 死体から右耳を切り取り、死体は燃やしておく。

 死体をそのままにしておくと、低級な魔物をエサにしている強い魔物が寄ってきて、初心者冒険者が危険に晒されると言っていた。

 結局、消滅させるのだったら二度手間だと思うのだがな。

 まあ、倒したと証明できるものが無いと、自己申告で不正が横行してしまうか。


「ふむ。報酬分は討伐できたな。帰るか」


 銅貨15枚分のゴブリンの耳を異空間の穴に放り込み、森の出口に向かう。

 宿屋に泊まる、という、人間としての楽しみ方を1つクリア出来そうである。


 薄暗い森を抜けて街道に出ると、とぼとぼと俯き加減で歩くレナを見つけた。

 朝はあんなに元気だったはずが、どうしたのだろう?


「レナ、何かあったのか?」

「あ、リガードさん」


 肩に手を置くと、生気の無い目で振り向いてきた。


「どうして、そのような顔をしている?」

「……薬草が切れないんですよ。クエスト失敗です」

「あ……うむ」


 薬草の強度を元に戻しておくことを忘れておったわ。

 レナ自身が低レベル、しかも普通の刃物では傷1つ付かぬであろうな。

 森に向かって、さりげなく手を向けて、薬草のみ強化を解いておく。

 更に、前方に見える森の脇に、薬草の群生地を作り出した。


「あそこにあるのは薬草ではないか? 試してみたらどうだ?」

「え? あんなところに薬草なんて生えてたんだ!」


 レナは薬草の前にしゃがみこみ、次々と採集していった。

 やがて、全ての薬草の採集を終え、我の元に駆けて戻ってくる。


「今日のノルマは達成できたか?」

「はい! でも、どうして今まで、あんなところに生えてるって気付かなかったんでしょう?」

「灯台下暗し……というのではないか?」


 ということにしておこう。




 クエスト報告のため、レナと共にギルドに入ると、我の姿を見た兵士が駆け寄ってきた。


「リガード様! 住居のご用意が出来ました! ご足労願います!」

「え? リガードさんって、貴族様だったんですか?」

「そんな訳なかろう」


 魔王だ。などとは言えんな。


「レナ、すまぬが、我のクエスト報告もしておいてくれ」

「え? あ、はい」


 レナが両手を差し出してきたので、我はそのまま、まだ血が滴る新鮮なゴブリンの耳をその両手に乗せてやった。


「――はふ!」


 変な悲鳴を上げて気絶してしまったが、まあ、問題はないだろう。




 兵士に着いて行けば、辿り着いたところは王城の敷地内だった。

 まさか、城に住めということか?



 

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