第3話:初クエストに行く。
住民証を無理やり発行させてやり、再びギルドへと戻った。
「住民証を家に忘れていたのですね」
受付と書かれたカウンター座っている女が、何を勘違いしたのかそんなことを言ってくる。
召喚されたばかりなのに、我に家などあるはずがなかろう。
「小娘よ。登録を頼む」
「小娘? 私はあなたより年上だと思いますが?」
「ほう? 見かけより年増なのだな」
ピシッ! と、女が笑顔のまま固まった。
周りで騒がしかった者共も、凍りついたように動きを止めてしまっている。
何か失言したか? 3000歳を超える我よりも年上だと、この女が自ら言ったのではないか?
……あ。しまった。人間は寿命が短いのであったな。
この女は我の見た目で判断したのであって、自身が3000歳を超えているわけではないのだな。
「すまぬな。初めてのことだったので、コミュニケーションをミスった」
「緊張されていたのですね。ふふふ」
「はっはっは」
緊張と言うより、人間と普通に会話をするのが初めてなだけだ。
ナティアとのあれは……会話に入らないだろ。
「では、この魔法陣に手を置いてください」
「うむ」
カウンターの上に羊皮紙に書かれた魔法陣が広げられ、右手を置いた。
「ここで表示されるのはレベルだけで、その他の情報は直接カードに書き込まれます。パーティを組むときなど、本人が承諾したときのみ、詳細な情報がカードから空間に表示されます。個人情報は保護されますから安心してくださいね」
受付の女がにっこり微笑みながら何やら詠唱すると、魔法陣が輝いて、羊皮紙だったものが手の平サイズのカードに変化した。
これがギルドカードらしいな。
カードを拾い上げ、内容を見てみると、名前の横に、レベル1 ランクF と書かれていた。
ギルドを出て門に向かう。
どうやらこの世界ではレベル1に戻ってしまったようだ。
だが……ステータスは元の世界と変わらない。
レベルが上げれるということは、今以上に強くなってしまうということか。
猛者と戦うのを楽しみにしていたが……この世界の魔王に期待するしかないな。
「お、冒険者になったか。それが通行証になるからな。帰りは外の門番にまた見せるんだぞ」
「ああ」
門番にギルドカードを見せると、あっさりと門を通ることが出来た。
目的地は、この門から少し歩いたところにある小さな森だ。
ゴブリン討伐や薬草採取など、初心者用のクエストを薦められて受けてきた。
内容はゴブリン5匹の討伐である。
クエスト報酬など金には興味がないが、この世界のモンスターどものレベルを知るにはちょうどいいだろう。
森に入ると、さっそくゴブリンが飛び出してきた。
鑑定で見てみると、レベルは4だった。
雑魚だな。
「グギャァァ!」
棍棒を振り上げ突っ込んできた。
右手を虫を払うように軽く振る。
ボォォォン!
突風が吹き荒れ、ゴブリンは粉々に消し飛び、森の木々も突風に根ごと引き抜かれ、草が生い茂っていた地表は捲れ上がり……森が消滅した。
「ふむ。討伐証明としてゴブリンの右耳を持って来いと言われたが、消滅させてしまった場合はどうするのだ?」
森もなくなってしまったし、ギルドに戻って聞いてくるか。
詳しく説明を聞かなかった我の落度である。