表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/24

その3

「だ、だけどシャルローネさん?」


「あ、シャルローネで結構ですよ。ケースケさん」


「じゃ、じゃあシャルローネ……」


どうも女の子を呼び捨てにするのは、気が引けるなぁ。

向こうは俺のこと、「さん付け」で呼んでるし。


「異世界の商いといえば、塩や調味料が定番なんだけど、そっちは手を出さないのかな?」


「定番……?」


「あ、異世界でも塩はあるよね? 調味料が少ないってのは、俺たちの世界の大航海時代の話だからさ……ハハハ……」


こちらの世界の定番で、ウッカリ話をしてしまった。

なんともお恥ずかしいお話だ。


「不足してますよ、お塩に砂糖、そのほかの調味料。……ですがケースケさん、不足しているからこそ高価なのです。そうするとどうなりますか?」


「……買い控えかな?」


「その通り♪」


シャルローネはワーイと喜びながら、小さく拍手してくれた。


「お塩に砂糖、その他の調味料というのは、高級品であるが故に、消費速度が遅いんです。ケースケさんのお言葉からさっするに、相当な量のお塩が右から左へとできそうなのですが、アルフォーネでは一度塩商いをするとしばらく商い停止になるんです」


「商い停止って、塩を売れなくなるの?」


シャルローネはこっくりとうなずく。


「高価で売れないのにお塩ばかり貯まっては、値崩れの原因になりますから。ですから調味料の商いは、たまに空から降ってくるボーナスだと思ってください」


そうか、あくまで本業は煙草商人なんだな。

シャルローネは待ち切れないかのように、ゴールデンバットシガーの紙ケースをデコピンでペシペシ。

一本抜き出すと火も着けずに香りを楽しんでいた。

そう、女の子がケーキを焼く香りにウットリするような表情で。


「あ、すみません。ケースケさん、私ばかり楽しんで……」


「いや、構わないよ。それよりもこっちの世界の煙草、それだけでいいの?」


「えっ⁉ もっと売っていただけるんですかっ⁉」


「あぁ、構わないよ。少し時間がかかるけどね」


「そそそそれでは、これを十パックお願いいたします! これで足りるでしょうか?」


シャルローネはがま口カバンから札束を抜き出し、そのまま俺に預けようとする。

現実ではほとんど見たことの無い、札束。

現ナマ百万円。

だけど俺は、その中から一枚だけ諭吉を抜き出し、ポケットに収めた。


「とりあえず仕入れはこれで十分。あとは取っておきな」


シャルローネの人柄に感化されたのだろう。

俺もまた、彼女には誠実でありたいと思った。

九十九万円の札束を押し返して、俺はブルゾンを羽織った。


「夕方までには戻るから、どこかで時間を潰してるといいよ」


「はい♪ それではここで待たせていただきます♪」


「それはそれでかまわないけど、いいかいシャルローネ」


「はい、なんでしょうかケースケさん?」


「この横引きの扉は襖と言うのだけど、これには決して触れてはいけない」


「触れてしまうとどうなるのでしょう?」


「君はこの世の生き地獄を味わうことになる……」


もしかして、これはフラグというヤツなのだろうか?

いや、正直者のシャルローネのことだ。

決して「男おいどん」な展開にはなるまい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ