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その1

雑記帳で連載していたものを独立させます。

プロローグ



その娘は天空高く、雲の上をのんびりとたゆたっていた。

明るい色の日傘につかまり、肩からがま口の大きな布カバンを提げて。

上品なロングスカートの裾を風に遊ばせて。


初夏の日差しを楽しんでいるようであった。

見下ろすと雲の切れ間から青い海が見えた。

そして緑色の、弓なりの列島。


娘は胸に下げたペンダントの鎖をつまみ、まぶたを閉じて唱える。


「導きの神の力を宿せし宝珠よ、魔法商人シャルローネが願い奉る。我が商うべき者の元へ、我を導き賜え」


宝珠は青い輝きをひとすじにまとめて、弓なりの列島を指し示した。


「あそこですね?」


シャルローネの頬に灯りが射す。


「あの島に、私のパートナーがいるんですね?」


むしろ日傘を掲げるような姿で、シャルローネは風に乗って降りていった。





そして本編




やってやったわ。

会社、辞めたったわ。

人を人として扱わず、自分の奴隷かなにかと勘違いした上司のいる、あの会社を辞めてやったわ。


ただひたすらノルマノルマ。

数字が上げられなかったら、人に非ずという言い草。

そして俺たちの努力の結果を、ロレックスの自動巻きに変える腐れ上司。


やっとれるか!

どれだけ頑張っても、その成果は吸い上げられるだけ。

俺たちは食うや食わずの生活。


やっちょれんわい! というのが本音だ。

だからこその辞表なのだ。

残念だったのは、事務所には経理のお姉ちゃんしかいなかったこと。


そう、くっされ上司の頬ゲタに、拳骨の一発もお見舞いできなかったことが心残りではあった。

俺は住居のある「ふきだまり町」に帰ってきた。

怪しげな人物がふきだまり、あるいは出てゆきあるいは入ってくる町だ。


便所・洗面所共同、風呂無し四畳半。

これが俺の城だ。

高卒上京、三流高校の出なので、このご時世まともな就職ではない。


それはわかっていたが、残業代はすべてサービス。

ボーナスの支給も無し、その上悪魔のようなノルマ。

さらには課長さまさまのロレックスと来たら、我慢にも限界がある。


このような会社など、辞めてやるに然り。

なに、男の人生なんとでもなるわい!

……なんとかなるだろうか?


結局のところ俺はいま現在無職。

収入が無い。

あんな会社に務めていたから、当然のように貯金は無い。


明日からすみやかに職安に通うか情報誌で職をもとめなければならない。

しかし、おかしな音が聞こえてきた。

向かいの部屋のおっさんが発する怪しい音ではなさそうだ。


なぜならおかしな音というのは、ジェット機のようなキーンという音だったからだ。

そしてドカンという音に大量の煙。

なんだなんだこの世の終わりかと思っていたら、煙が晴れてきた。


煙が晴れると、そこにはお嬢さんが、煙にケホッとむせながら、女の子座りでわが四畳半にペタンと座っていた。

お嬢さんは照れくさそうに笑う。

「着地失敗しちゃいました……エヘヘ……」


いや、エヘヘはいいんだが、何が起こったのよ?

なんでこんな場末の下宿もどきに、きれいなお嬢さんが現れたのよ?

つーかこれだけの爆音に、我が城四畳半の住民は誰も騒がない。

お嬢さんはニッコリ微笑む。


「はじめまして、わたくし異世界商人のシャルローネと申します」


異世界商人?

なんじゃそりゃ?

いや、確かにその美貌は異世界的ではあるが……。


「御理解いただけません?」


「まあ……なぁ……」


「簡単に言うと異次元世界とこちらの世界を行き来する商人だと思ってくだされば……」


「つまり、こっちの世界のモノを買い付けに来たか、そちらの世界のモノを売りつけに来たか?」


「さっそくの御理解、ありがとうございます♪ 私はこの世界に、煙草を買い付けに来たんです♪」


「煙草くらい、いくらでもあろうに……」


「ですがこの世界の煙草は品質から嗜好まで、私の世界の貴族にピッタリなんです」


「ということは、こちらで安く仕入れて、そちらで高値をつけると……」


「御明察! さすが私のパートナーになる方ですね」


「パ、パートナー?」


「はい、私はトラブルを避けるために、現地での仕入れは現地人にまかせることにしてるんです」


そう言って、シャルローネさんはバッグから札束を取り出した。


「あの、もしよろしければ、お名前を……」


「お、俺の名は足立圭介」


「ケースケさんですか♪ では申し訳ありませんが、この世界の煙草をひと通り購入してはもらえませんでしょうか? もちろんお礼はいたします」


シャルローネさんは札束から紙幣を一枚抜き出した。


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