03 仲間たち
パーティーのみんなが直ぐそばまでやってきた。
マルセイさんとティガさんが左右からボクを挟み込み、胡蝶さんと嘉納さんは少しだけ離れた場所で立ち止まる。
ロキシさんはさっきからずっとボクを抱きしめたままだ。
「なぁ、スカイ!
なんだって出て行こうとするんだ?
しかも俺たちに挨拶もなしに。
水臭いだろうが!」
マルセイさん……。
狼獣人の彼は爽やかで人当たりが良く、クエストが終わった日なんかはよくボクを飲みに連れていってくれた。
すぐに兄貴風を吹かせるけれども、それが全然嫌じゃない。
そんな彼との楽しかった日々を思い出す。
「そうなのですよぉ!
納得できません。
理由を教えて下さい!」
ロキシさんが瞳を潤ませながら、尋ねてくる。
このひとは人嫌いで有名な妖精族の中にあってスキンシップが大好きな変わり者だ。
初対面の相手にはエルフらしく素っ気ないが、気を許した相手にはいつもベタベタして構おうとするおかしなひとだった。
優しく明るい彼女をこうして悲しませていることが、ボクは残念でならない。
「グルルルル……。
スカイ……。
ドウシテモ、行ク、ノカ?」
ティガさんが指先に鉤爪の生えた大きな手のひらを、ボクの肩に置いた。
ズシリと重たい。
全身を鱗に覆われた人型の竜のような容姿をした彼は、身の丈2メートルもある大柄な竜人族で、その見た目にそぐわず豪気な性格をしている。
けれどもいつもボクや、パーティーのみんなには優しかった。
「……スカイ様。
わたくしたちを置いて行かないで下さいませ。
わたくしたちには、貴方様が必要なのです。
来たるかの最恐最悪の魔王との決戦は、スカイ様抜きでは厳しいものになるでしょう。
……いいえ、そうでなくとも、わたくしは個人として貴方様と離れたくありません」
胡蝶さんまで……。
なんでも元は東方の巫女だったらしい彼女は、普段から淑やかで、あまり言葉を話さない。
そんな彼女がボクを引き止める為とは言え、こんなにたくさん喋るなんて、驚きだ。
「……すみません」
ボクは呟き、悲しげにまつ毛を伏せた胡蝶さんから、たまらずに視線を外す。
するとずっとボクを真っ直ぐに見つめていた嘉納さんと目があった。
身に纏った鎧の凶々しさや、半人半鬼ゆえに額の右側から1本だけ突き出た鬼の角が厳しい。
でもそんな見た目とは反するように、涼やかで理知的な彼は、その懐の深さもあって対面した相手に凪いだ海を思わせるような傑物だ。
序列1位の彼は、その思慮深さでこれまでずっとパーティーを導いてくれていた。
寡黙な嘉納さんが穏やかに口を開く。
「……スカイ。行くのか?」
彼の言葉には諦念が感じられた。
きっとこのひとは、もうすべてを察しているのだろう。
◇
ボクはパーティーのみんなを見回してから、話し出す。
「……みなさん、申し訳ありません。
ボクは国家反逆の罪を着せられ、国外追放処分となりました」
「な、なんだって⁉︎
どうしてそんなことに!」
驚くマルセイさんに、昨日王城に呼び出されて国王陛下から直々に糾弾されたことを説明をする。
「ボクは今日にもレイクエイム王国を出ていかなければなりません。
みなさんとの接触を禁じられていたせいで、別れの挨拶にも伺えませんでした。
……すみません」
パーティーメンバーの顔色が変わった。
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