02 奇跡のパーティー
王都レイクエイムの東門付近までやってきた。
仲間たちと何年もの時間を過ごした王国をこんな形で後にしなければならないのは、残念で仕方がない。
背後を振り返り、石畳みの城下町を眺める。
目に映るのは、早朝からの人々の営み。
昨日まではこの輪のなかに自分も居たのだ。
そうして感慨に耽っていると、監視役の衛兵が槍の柄でボクの背中を小突いてきた。
「立ち止まるな、犯罪者め!」
思わずつんのめる。
ボクはつい不満を顔に出しながら、監視役を睨んだ。
「なんだ、その目は。
貴様、自分の立場を教えてくれようか?
この犯罪者が!」
数人の衛兵たちがボクを囲んで武器を構える。
「……なんでもないです」
ボクは諦め、強張っていた肩の力を抜いた。
この人たちと争っても仕方がない。
もう沙汰は下されてしまったのだ。
たとえ誤解が原因であろうとも、いまのボクは国家反逆者との烙印を押された身。
少ない荷物を抱え直し、王都を後にしようと足を踏み出した。
するとその時――
◇
巨大な影が大地を黒く塗り潰していく。
辺りに猛烈な旋風が巻き起こり、上空からバサバサと何者かが羽ばたく音が聞こえてきた。
見上げるとそこには、真紅に輝く鱗に全身を覆われた山の様な巨躯が見える。
ボクにとっては見慣れたその体躯。
これは『猛獣使いの饗宴』序列2位である、竜人族のティガさんの召喚したバハムートだ。
「ひ、ひぃっ⁉︎
なんでこんな所に竜が……⁉︎」
火竜の圧倒的な威容を間近にした衛兵たちが、情けない悲鳴を上げる。
バハムートが地に降り立った。
ズズンと地鳴りがして大地が揺れたかと思うと、その竜はすぐに地に身体を伏せた。
竜の背に乗っていた5人の男女が、急いで降りてくる。
「スカイ!
待ってくれ!
どうして、俺たちに何も言わずに出ていこうとするんだよ!」
一番最初にボクの元まで駆けて来たのは、獣人族のマルセイさんだ。
狼獣人の彼はボクのすぐ目の前で立ち止まり、獣耳と尻尾を力なく下げながら問いただしてきた。
「スカイさん……!
行ってはダメです!」
次にやって来たのは、妖精族のロキシさん。
彼女は駆け付けるなりボクに抱きついてきて、抱えたボクの頭を豊満な胸に押しつけてくる。
「――むぎゅ⁉︎
ロ、ロキシさん……!
息が、息が出来ません……!」
ボクが窒息状態に苦しんでいると、ティガさんもやってきた。
その後ろには胡蝶さんと嘉納さんもいる。
彼らはみんな、揃ってボクに心配そうな顔を向けていた。
この人たちこそが、奇跡とまで謳われた『猛獣使いの饗宴』のメンバー。
世界最高峰の天才サモナーたちである。
◇
「く、苦しいですって、ロキシさん!」
「あ⁉︎
ご、ごめんなさい!」
ようやく胸から解放されたボクは、順にみんなを見回した。
序列5位
ロキシ・マーサ。
優しげな妖精族の女性で、主にドリアードやピクシーなんかを召喚する妖精サモナー。
序列4位
マルセイ・ベルナレフト。
軽装の爽やかな獣人族の男性で、フェンリルを召喚する獣サモナー。
序列3位
胡蝶あげは。
東方の巫女服を着た人間族の女性で、その淑やかな振る舞いに反して王蜘蛛や王百足や毒の蝶なんかを召喚して熾烈に戦う蟲サモナー。
序列2位
ティガ・ギィ・アーシュケル。
本人も巨大なハルバードを振り回して戦う大柄な竜人族で、バハムートを召喚する竜サモナー。
そして最後に――
序列1位。
嘉納凶鎧。
凶々しい漆黒の鎧に身を包んだ東方の侍で、妖艶な美女酒呑童子を召喚する鬼サモナー。
寡黙な彼は人間族であるものの、半分は鬼の血が流れているらしい。
これらのメンバーに6人目のこのボク、スカイ・シューターを加えたパーティーが、昨日までの『猛獣使いの饗宴』だった。
良ければページ↓からブクマや★評価をお願いします!




