01 追放
魔王討伐を目前に控えたその日。
ボクは国王陛下に呼ばれ、王城へとやってきていた。
謁見の間で膝をつき、陛下の御前に頭を下げる。
陛下が重々しく口を開いた。
「……面を上げよ」
「はい」
顔を上げると、陛下は玉座に座ったままボクを見下ろし、眉間に皺を寄せていた。
「スカイ・シューターよ。
我がレイクエイム王国が誇る『猛獣使いの饗宴』の荷物持ちよ。
なぜ貴様だけが、ただ1人こうして呼ばれたのか、理由はわかっておろうな?」
はて、なんのことだろうか?
猛獣使いの饗宴とは、10年に1人と謳われるほどの天才サモナーたちが、同時期、同パーティーに5人も一挙に揃い踏みした奇跡のパーティーである。
ボクはそこで荷物持ちをしているのだが、ボクだけが呼ばれた理由なんて皆目見当もつかない。
「……申し訳ございません、陛下。
わかりません」
正直に答えると、玉座から深い深いため息が聞こえてきた。
呆れ顔をした陛下が、蔑んだ視線を向けてくる。
まるでゴミでも眺めているような目だ。
「……言われねば分からぬか。
まったく救いようのない輩よ。
貴様、自らが市井の者らの間でどのように揶揄されているか、わかっておらぬのか?
この余ですら聞き及んでおるというのに、貴様自身が知らぬとは言わせぬぞ」
それなら知っている。
たとえば『奇跡のパーティーの荷物持ちならぬ、ただのお荷物』だの、『パーティーに必要のない幻の6人目』だのと言った嘲りだ。
だが言いたいヤツには言わせておけばいい。
ボクは荷物持ちとしてしっかり雑用をこなしているし、さらに戦力としてもちゃんと役に立っている。
ただ戦力としてのボクは、他人が一見しただけでは効果がわかりにくいだけなのだ。
実際、猛獣使いの饗宴のみんなはいつも感謝をしてくれている。
ボクはそのことを伝えるべく、口を開く。
「ですが、陛下。
ボクはちゃんとパーティーに貢献しています。
以前にも説明しました通り、ボクの能力は――」
「ええい、黙らぬか!」
説明を始めてすぐ、ボクの言葉が陛下の大声に遮られた。
「またそれか!
貴様がいるだけで、皆の力が増すだと⁉︎
信じられぬわ!」
「で、ですが、本当に――」
「くどい!
貴族たちからも貴様をかのパーティーメンバーから罷免せよとの声が上がっている!
さらには我ら王侯貴族を謀った罰を与えるべきだとの意見もあった!
余も同じ思いである」
「そ、そんな⁉︎
ボクが一体なにを謀ったというのです!
すべて誤解だ!
それにいまは魔王討伐に向けての大切な詰めの時期なのです!
いまボクが抜けたら、パーティーのみんなが――」
「だからこそだ!
魔王討伐に貴様などのお荷物を連れて行かせる訳にはいかぬ!
この足手まといめが!」
「話を、話を聞いてください!」
「ええい、もうよいわ!
貴様の顔など、これ以上見とうもない。
沙汰は追って下す。
近衛よ、この詐欺師を摘み出せ!」
金属の鎧をガチャガチャ鳴らしながら、何人もの近衛兵が駆け寄ってきた。
そのまま拘束されてしまう。
「離して!
離してください!」
「ええい、陛下の御前であるぞ!
暴れるな!」
思い切り殴られる。
「がはっ……!」
ボクは抵抗虚しく、謁見の間から追い出されてしまった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
翌日。
城からの使いがボクの宿へとやってきた。
罪状が読み上げられる。
「元『猛獣使いの饗宴』荷物持ちのスカイ・シューターへ、陛下よりのお達しを告げる。
貴様は永久国外追放となった。
罪状は王侯貴族に虚偽を語り、騙したことによる国家反逆罪である!
明朝までに荷物をまとめ、この国より立ち去るがよい!」
ボクは項垂れたまま、衛兵の言葉を聞いた。
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