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獣の王に愛されて:選び放題と言われましても!  作者: 高瀬さくら


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21/38

21.かわいらしさは認めます


 目が覚めたら視界がかわっていました。森羅はいない、布団の中に雪花一人。

 

 けれど、その布団が、布団が。

 

 何が起きたの。この世界、何。


 ようやく布団というか、布の海でおぼれ死ぬかもって思い、もがくように布から抜け出すと、広大な平野――いや畳。


 えええ、ここどこ!?


 見上げると、黒い塔は机の脚。視界が低い、どころかすべてが大きい。


 アリス・イン・ワンダーランド! 


『EAT ME』

 ”私を食べて”というお菓子を思いだす。

 

 私、ここで夕食はいただいたけど、そのせい!? 


 それとも


『DRINK ME』

”私を飲んで”だっけ?

 

 どっちでアリスは小さくなったのか。


 よろよろと歩く。全然うまく歩けない。生まれたての小鹿バンビちゃんのように、足がプルプルするよ!


 そう、身体も変だ。


 私、四つ足!? そもそも目の前の手が変。毛が生えている!! 爪も生えている。


 バンビちゃん!? いや、足先は蹄じゃない、二つに割れてもいない。


 生まれたてのバンビちゃんの足は見たことないけど、なんだか違うと思う。

驚愕して歩こうとしてもうまく歩けない。

 

(……だれか、たすけて)


 さけぶと、“にー”という頼りない小さな鳴き声が響いた。


 どこかでかわいそうな小さな獣が鳴いているのかなって――私!?


“にー”、“にー”という声しか出ない……。


 そしてふすまが開かれたような大きな音がして、それが息をのんだ気がした。やけに大きな影、森羅だって思ったとたん、それが覆いかぶさってきた。


 やけに大きな森羅の顔。それは、人間の顔。そして包み込んできたのは彼の手。そう、私は彼の片手に収まるほどの大きさになっていたのだ。


 彼はしばし考えて「待ってて」とささやいて、それから席を外す。


(どうして、どこにいっちゃうのーーーー!!)


 “にーーー”


 先ほどよりは、強い声で鳴きだすと彼が慌てたようにもどってくる。


「ごめん。もう、不安にさせないから」


 もう大丈夫だよ、と彼は優しく囁いて、まるで壊れやすい卵を扱うかのように、広げたタオルの中に私をくるんで両手で抱き上げた。


“なー”


 先ほどより低い声で訴えると、彼は両手で抱き上げて、ゆっくり部屋を移動する。そして、鏡台の鏡掛をさっとめくると、正面に向き合う。


 森羅の腕の中にいたのは、小さな小さな生き物。


 真っ白なふわふわの毛、爪よりも小さな鼻はうっすらと桃色、そして毛にうずもれるように小さな耳は三角で、その内側も桃色。


 私が一歩身を乗り出すと、森羅がより鏡に近づいてくれる。手を出すと、その手も先までが綿毛のようで、小さなとがった爪が覗いていた。


(これってーーにゃんこーー!!!?)


 ――私は、子猫になっていた。


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