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獣の王に愛されて:選び放題と言われましても!  作者: 高瀬さくら


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18/38

18.挨拶ですか、面接ですか、見極めですか?

 ふすまを開けた先には、森羅のお母様がいた。


(目の前で騒いでいたの、私達!?)


 いやもう、これなんの罰ゲーム?

 いくらささやき声でも、おそらくみんな獣人、だよね。耳がとてもいいはず。人間とは比べ物にならないくらいね。


(というわけで、すでに撃沈!)


 そう、みんな。

 部屋の中にお母様以外の人達がいた。しかも、聞こえていたはずであろう会話には誰も触れてくれない。それは優しさだろうか……。


「そちらが、森羅殿が選んだ娘か」

「母上、雪花です」


 母上さまは、かなり広い部屋の上座に鎮座されておられました。もう「殿」とか森羅が呼ばれ出してもおかしくない。さすがに御簾はなかったけれど、結構な距離だ。


「ふうむ」


 まじまじと見られて、雪花は落ち着かなく身じろぎした。人間ではない眼差し、なんだろう、この人。人ではないことはわかるのに、すごく落ち着かない。


 横に控えるのは先ほど紫籐と呼ばれた森羅の弟で、彼も姿勢正しく膝を開いた正座をしている。目は伏せたまま。もうこの人たち何なの。


 あと、三人ほどおじさんがいたけれど、彼らの紹介はない。


「雪花と申します。初めまして……よろしくお願いします」


 もう何が正しい挨拶かわからない。そういえば手土産もないし、私もうダメダメ。


 とりあえず先ほどの夕月ちゃんのように、指をついて頭を下げる。

 頭をあげると、やっぱりまじまじと見つめられているが、その視線が先ほどとは違う、好奇心に満ちているものになっていて、あれと思う。


「森羅殿が選んだのであれば、間違いなかろう。言うことはない」


 そうだろう、とばかりに三人のおじさんたちも頷く。なんだかその頭に耳が見えた気がした。“狸”という言葉が浮かんだ。そうだ、狸だ。


 お母様の正体はわからないけれど、このおじさんたちはみんな狸だ。


(狸親父……って、ダメ考えちゃ。笑っちゃう)


 慌てて自分の太ももをつねる。緊張が高まりすぎて、笑い出しそう。


 笑みだかなんだかわからないものを浮かべている雪花をよそに、母上様の視線は森羅に向けられる。


つがいの結びは――まだか」

「申し訳ありません」


 え、その結びって……えええと、まさか行為のこと!? お母様、そのこと聞いちゃう?


「情けないことよ、と申しませぬ。――雪花殿」

「は、はい!」


 声が裏返ってしまった。ありがたいことに誰もつっこまないし、母上様の視線は厳しいものではなかった。


「選択権は我らメスにある。とはいえ、森羅を選んでくださればありがたい。強制ではないが」

「あの……はい」


(嫌われてはない!?)


 でも逃げ場塞がれた? 逃げる気はないけど、これってお願いされているの? 嬉しがっていいの?


 フッと、母上様の眼差しが柔らかくなる。


「願いでも我儘でも何なりと。それを受け止められるか、その度量を試すがよかろう」

「怖いな、母上」

「雪花殿。遠慮することはないぞ。――森羅殿、せいぜい励まれるがよい」


 森羅が笑い、母上様もわずかに笑顔らしきものを見せる。狸おじさんたちは、くわばらくわばらと囁き、場が和んだような、そうじゃないような。


 興味はあったが、見定めは終わった、という感じで面接は終わった。

 紫藤さん、つまり森羅の弟は、表情を全く崩さなかった。


 結局評価はどうだったんだろう、と思いながら部屋を出たら森羅が笑いだす。


「笑うなんて、ひどい」

「ごめん、雪花が笑いそうになっていたから、俺もつられて笑いかけた。――母上は雪花を気に入っていたよ」

「……」


「雪花は疲れただろう。もし嫌じゃなかったら、外を散歩してくる? 落ち着きたいだろう?」


 言われてみると、この家の中では窮屈で、少し一人になりたい気がした。うんって頷いたら、頭が撫でられる。


「出口まで案内するよ。外では、黒雨が待っているから」


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