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委員会と係決め

 「じゃあ、次は委員会と係を決めようと思います!まず、学級委員長から。仕事の内容を説明すると授業時の号令、集会時などの点呼、HRの仕切り役などがあります。あ、だから学級委員長が決まったら、この委員会と係決めも前に出て仕切ってもらいます。男女1人ずつ。誰かやりたいって人は手を挙げて~」


 学級委員長なんていう大変な仕事をやりたがる人なんているのだろうか?

 いや、当然いるといえばいるのだろう。

 だが、俺の中学校時代を振り返ると三年間とも推薦または話し合いまたはじゃんけんやあみたくじによって決まったような気がする。

 決め方の方法についての記憶は定かではないが、少なくとも立候補者が誰一人いなかったこと、それだけは確かだ。

 

 そのような経験があったからだろうか。

 今年もそうなるだろうと勝手に決めつけていた。

 だが実際は違った。

 驚くことに手を挙げたものがいたのだ。

 しかもちょうど男女1人ずつ。


 「お、いいね~。えっと、中野君と雪村さんだね。他にやりたいって人~?」

 

 先生はにっこり笑顔でそう言う。

 手を挙げるものは他には誰もいない。

 学級委員長をやりたいのは二人だけのようだ。

 

 「よし、じゃあ決まりだね。2人に拍手!」


 2人にパチパチと拍手が送られる。

 まさか、立候補で決まるとはな。

 予想外の出来事に驚きを隠せないが、嬉しい誤算だ。

 

 このまま立候補者が出ず、他の方法で決めるとなったらおそらくじゃんけんやあみたくじになっていただろうからだ。

 この出会って1時間もたっていない中で推薦なんてものをまともにできるはずもないだろうし、話し合いをしたところで話が結局まとまらず最終手段の運任せ、すなわちじゃんけんやあみだくじになる確率が今までの経験上相当高かったはずた。

 

 クラスに男子は20人くらいはいる。

 だからそういった運任せで自分が学級委員長になる確率は相当低いが、それでも数%はある。

 学級委員長になるのを無条件で避けることが出来るのならそれに越したことはない。


 「はい、では2人とも前に出てきてください」


 2人はすっと立ち上がり、教壇の方へ向かう。

 その足取りは堂々としたもので、まさにみんなの前に立つにふさわしいオーラを放っていた。

 2人が教壇へ着くと、先生は少し悩んでからこう言った。


 「うーん、このまま2人に委員会と係決めの仕切り役をバトンタッチしようと思ったけど、その前に抱負でも言ってもらおうかな」


 うわ、自己紹介の次は抱負とか絶対俺だったらやりたくない。

 だが、学級委員長に立候補する2人だ。

 そんなことは朝飯前というように抱負を語り出す。


 「じゃあ、まず僕から。この度、学級委員長になりました、中野翔太(なかのしょうた)です。このクラスが明るく楽しくなるようにしていきたいです。まだまだ未熟なところもたくさんありますが、学級委員長としての仕事を全うできるよう頑張るので、一年間よろしくお願いします」


 彼、中野翔太は眩しいほど輝いている笑顔で抱負を語り終えると拍手が起こった。

 彼の容姿といえば、サラサラの金髪は短く切り揃えられており、とても優しげな瞳をしている。

 その瞳とは対象に眉毛はキリッとしており、鼻筋が通っている。

 身長は175センチ程度で、細身ながら体は引き締まっている。

 一言で表すならイケメンである。

 男の俺でもそう感じるのだから、女子から見ればもっとかっこよく見えるのだろう。

 

 そう言えば、おそらく新入生代表挨拶も務めていたのも彼だったはずだ。

 ということは成績も優秀で先生からの信頼も厚いというわけか。

 非の打ち所がない完璧超人かよ。

 彼に人間的魅力で勝てるところが見つからず、一人敗北感を味わい落ち込む俺がそこにはいた。


 彼の長所一つ二つとったくらいで彼の人間的魅力は全く下がらないだろう。

 だが、俺の長所一つとられると俺の人間的魅力はがくっと下がるはずだ。

 これは彼と俺では持っている長所の差がとてつもなくあるからだ。

 改めて世界って平等じゃねぇなと思った。

 

 「それでは、次は私ですね。中野君と同じく学級委員長になりました、雪村絵里香(ゆきむらえりか)と言います。未熟者ですが、学級委員長としてみんなを引っ張っていけるように頑張りたいです。一年間よろしくお願いします」


 そう語り終えるとさっきと同様に拍手が起こった。

 笑顔で抱負を語った中野君とは対照的に、キリッとした真剣な表情で雪村絵里香は抱負を語った。

 

 カズと同じか少し高いという女子にしては高い身長を持ちながらも、その体型はモデル体型でスラッとしている。

 目を惹きつられける美しい金髪のサイドテールに透き通るような大きな碧眼が印象的だ。

 目鼻立ちが整っており、全体的なバランスがとれている色白な顔からは金髪碧眼と相まって、日本人離れした美貌を醸し出している。

 おそらくハーフ或いはクオーターだろう。


 ため息が出るほどの美人であることは間違いないのだが、どうも近寄りがたいオーラが出ている。

 美人すぎるからというのもあるかもしれないが、切れ長の目は鋭く彼女の美貌をより一層強調する反面、冷たさを感じさせるし、何より笑顔がなく無表情なのが近寄りがたいと感じる一番の原因かもしれない。

 

 まあ、一言で表すなら高嶺の花といったところだろうか。


 「はい、2人に抱負を言ってもらったことだし、先生はここらへんで司会進行をバトンタッチしようと思います。じゃあ、後は2人でよろしく!」


 先生はそう言って教壇を降り、空いていた廊下側の一番後ろの席に座って様子を見守るようだ。


 「それではここからは僕らが委員会、係決めの司会進行を進めていきます」


 中野君がそう言っている間に、雪村さんが黒板に役職名を書いていく。


 「まず、委員会から決めていこうと思います。じゃあ、体育委員から決めていこうと思います。仕事内容は体育時の号令や用具準備、体育祭の準備や企画進行などがあります。男女1人ずつです。やりたいって人は手を挙げてください」


 中野君がそう言うと、俺の前と右前の席の奴がバッと手を挙げた。

 そう、カズと霞である。

 カズが手を挙げるのはなんとなく予想がついていたが、霞が手を挙げるのは意外だった。

 少なくとも俺が知っている中学2年間、霞はそういった委員会などは面倒くさそうと言って入っていなかったはずだ。

 もしかしたら高校に入って考えを改めたのかもしれない。

 

 「他にやりたいっていう人はいますか?」


 中野君がそう言うが、他に手を挙げる様子はない。

 彼は座席表で名前を確認してから

 

 「では、体育委員は霞ヶ浦さんと白石君に決定です」


 パチパチと拍手が起こる。

 鳴り止まると中野君が「では次は風紀委員………」と言って、というように委員会と係決めは順調に進んでいった。

 途中、誰も手を挙げなかったり、逆に必要人数以上が手を挙げたりとすんなりいかなかったところもあったが、時間通りに委員会と係決めは終わった。

 ちなみに俺は仕事量が少なく圧倒的に楽そうな保健係に手を挙げ、幸い誰とも被らなかったためすんなり決まった。


 


 委員会と係決めが終わると終礼となり、先生がプリントを配り始めた。

 全員にプリントが行き届いたのを確認すると


 「プリントを見て下さい。プリントにも書いてあるように、明日はSW(ストレンジワールド)内のコロシアムで、ギルドの職員さんによる講習会があります。服装は自由ですが、ジャージなど動きやすい服装で来ることをおすすめします。また冒険者カードが必要らしいので、今日忘れずに今日ギルドに行って作成しておいて下さい。集合時間は朝の9時です。毎年必ずコロシアムの場所が分からなくて遅刻する人がいるようなので、きちんと確認しておくように」


 先生はそう言い終えると「では、学級委員長の2人のうちどちらか号令をお願いします」と言い、雪村さんが「起立」と言った。


 「気をつけ………礼」


 「「「さようなら」」」


 生徒全員でそう挨拶し、終礼は終わった。

 終礼を終えた生徒たちは友だちと会話をし始め、クラス内もそれに伴いざわざわし始めた。

 それらの会話の話題のほとんどはSWについてのものだった。

 

 「ねえ、ユウ。WG(ワープゲート)前の広場に何時集合にする?」


 俺らもご多分に漏れずSWについての話題を挙げる。

 俺はちらっと黒板の上にある時計に目を向ける。

 ちょうど12時か………。

 家帰って飯食って着替えてその他諸々の準備して……。

 1時間半あれば十分それらの事はできるだろうが……


 「2時でどうだ?」

 

 俺は時間に余裕を持たせるため、敢えて2時を選択した。

 

 「うん、いいよ」


 カズはそう言うと、リュックを背負い「じゃあ、また後で」と言って教室を出て行った。

 

 「ああ、また後でな」


 さて、俺も帰路に就くとするか。

 そう思い、俺もリュックを背負いカズの後を追うようにして教室を去った。

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