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自己紹介

 始業のチャイムがなると、自席を離れて会話していた生徒たちは素直に自席に戻り着席した。

 教室に先生が入ってくると、今までガヤガヤしていた教室がすんっと静かになった。

 若い女の先生だった。


 「じゃあ、授業始めるから学級委員長………はまだ決めていないから、えーっと、今日日直の石倉さん、号令をお願いしてもいいかな?」


 先生がそう言うと、窓側の列の最前列の席に座っている石倉と呼ばれた女子生徒は「あ、はい」と応え、


 「じゃあ、起立。気をつけ………礼」


 「「「お願いします」」」


 そう言って生徒たちは着席した。

 すると女教師は笑顔で元気よくはきはきと話し始めた。


 「皆さんおはようございます。1年C組担任の花咲千鶴(はなさきちづる)です。入学おめでとう!と言いながらも私も新任でこの高校に来たばかりです。だから皆さんと同じ1年生ですね。新任ということもあり、みんなに迷惑をたくさんかけちゃうかもしれないけど、その分みんなをいろんな面からサポートしていけたらいいなと思っています。ちなみに教科は英語を担当します。一年間よろしくお願いします」


 おそらく愛想がありみんなから好かれるタイプの先生だろう。

 そして年が近いということでとても接しやすそうな気がするする。

 俺が抱いたイメージとしては先生というよりも少し年が離れた先輩という方が強かった。


 「よし、早速だけど自己紹介をしていこうか」


 花咲先生がそう言い出すと教室内がざわざわし始めた。

 自己紹介か~。すごいやりたくねぇな。

 クラス全体の40人分の視線が自分に集まるのだけでも嫌なのに、緊張の挙げ句早口になって噛んでしまった時の恥ずかしさは半端ない。

 周りがそんなに気にしてなくてもめちゃくちゃ「あ~死にてぇ~」となる。


 「はいはい、静かに。じゃあ、出席番号1番の石倉さんからよろしくね!」


 すると出席番号1番の彼女は立ち上がり自己紹介をし出した。

 

 「石倉文香(いしくらふみか)です。湖北中出身です………」


 地獄の自己紹介が始まった。

 出席番号1番って何をするも最初だから大変そうだななんてことを考えているうちに前の席の霞の自己紹介が終わり、すぐに俺の番になってしまった。

 俺は慌てず落ち着いて立ち上がり、一呼吸おいて自己紹介を始めた。


 「黒瀬祐也です。東中出身です。一年間よろしくお願いします」


 なんとか噛まずに言えて良かったと安堵しつつ座った。

 本当はあともう一言二言付け足した方が良かったかもしれないが、噛みたくなかった俺は簡潔な自己紹介にした。


 その後も何事もなく自己紹介は進んでいった。

 時折自己紹介にギャグを折り入れて周りを白けさせたり、逆に笑わせたりする生徒もいた。


 「はい、みんなありがとう。楽しいクラスにしていきましょう。次は提出物を集めます。多分みんな個人情報が入った書類袋を持って来ていると思うから前に回して下さい」


 俺ら生徒は指示通り書類袋を前に回していく。

 回し終えた所で花咲先生は「それでは配布物を配ります」と言って巨大な茶封筒を配り始めた。

 

 「その中には保護者宛ての手紙がたくさん入っているらしから、保護者さんにちゃんと渡しといて下さいね。じゃあ、次はみんなへの配りもの、生徒手帳と学生証を配るので出席番号順に取りにきてください。あ、学生証は生徒手帳の中に入っています」


 生徒手帳の大きさはちょうどズボンのポケットに入るくらいの大きさだった。

 先生から生徒手帳を受け取り、席に帰ってから開くと学生証があったので取り出すと真顔で写っている俺の写真が印刷してあった。

 こういう証明書などの写真は真顔で写っているせいか、なんかいつもの自分と違うような気がしておかしく思う。

 だからなのかこういう写真を人に見られると何故か恥ずかしいと思うから見られたくない。ということで俺は学生証に書いてある情報が間違いないことを確認してすぐ生徒手帳にしまった。

 

 ぱらぱらと生徒手帳をめくっていくと、まず最初に色々な校則だったり教育理念だったりが書かれており、その後ろは予定などが書けるようになっており手帳として使えるようになっていた。

 そして最後まで見ていくと後ろの面に、つまり学生証が入っていた面と反対側の面に何か赤いカードのようなものが挟まっていた。

 

 なんだ、これは?

 そう思って取り出すと、そこには「上代高等学校冒険許可証」という文字が刻まれていた。

 ああ、なるほど。

 おそらく冒険者カード~冒険するにあたって必要な身分証明書~を作る際に必要なものだろう。

 

 「みんなちゃんと自分の学生証が入っているか確認して下さいね」

 

 生徒全員の分の生徒手帳と学生証を配り終わったのか先生が喋り出す。


 「生徒手帳の裏の方の面を見て下さい。赤いカードが入っていますよね?それを取り出してください。もう気づいている人もいるかもしれないけどそれは学校許可証といって、冒険者カードを作る際に必要なものらしいです。ちょっと私もよく分からないんだけど高校生って学校の許可なしに冒険者カードを作れないらしいんです。だから冒険者カードを作る際は、身分証明書となる学生証とその赤いカードを忘れずに持って行くようにしてください」


 俺の予想通りだった。というか誰でも刻まれている文字を見れば察しがつくだろうがな。


 「あ、あと生徒手帳と学生証はなくしても再発行出来るらしいけど、いろいろとめんどくさい手続きをふまなきゃいけないらしいのでなくなさいように注意してね!」


 生徒たちが学生証の見せ合いっこなどでワーワー盛り上がっている中、先生はそう注意する。

 果たして真面目に先生の忠告を聞いている奴が何人いるだろうか。


 「はいはい、みんな落ち着いて。静かに。…………なくすと再発行料とかもかかる可能性もあるから本当になくさないように気をつけてね!」


 先生も忠告が少ない人数にしか行き届いていないのを感じたらしく、静かになり自分に注目が向いてから再度忠告する。

 今度はクラス全員にしっかり行き届いたように感じる。

 先生はそれに満足したらしく、次やることに進もうとする。


 「じゃあ、次は…………」

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