いざ1年C組へ
この上代高校では四階に1年生教室、三階に2年生教室、二階に3年生教室、そして一階に大職員室などがある。
そのため、単純な話だが1年生が一番階段を上らなければならない。
「くそ、なんで1年生が一番上の階なんだよ。大体こういうのって3年生が一番上だろ」
人によっては「そんな小さいこと気にするなんて器が小さい」と思うかもしれないが、始業のチャイムギリギリの時、階がたった一階違うだけで遅刻するかしないかが決まる時もあるのだから、全く小さいことなどではないと俺は思う。
そんなにギリギリに学校来らずに時間に余裕を持ってくるのが正しいのだけれど。
「まあ、でも学年が上がるごとに下の階になるからいいじゃん。先に大変か、後から大変かの違いでトータルで言えば結局変わらないし」
全くカズの言うとおりだが、俺は夏休みの時宿題を後にやるタイプ、つまり先に楽したいタイプの人間だからできれば1年生の時に階が下の方が良かった。
そんなどうでもいいことを思いながら1-C教室へと向かった。
俺らが1-Cと書かれている室名札がかかっている教室へと入った時、教室内にはクラスの人数のおよそ半分、すなわち20人くらいがすでにいた。
その男女比はというと今のところちょうど1:1くらいだった。
体育祭や合唱コンクール、球技大会などで男女の人数に差があると人数制限などでいろいろと面倒くさかった記憶があるので、半々くらいのバランスがちょうどいい。
クラスの生徒に目を向けると、カズみたいに髪を染めている生徒はそこそこいるが大体が金髪か茶髪で、時々銀などに染めている奴もいるくらいで、悪目立ちする色の髪をしている奴はいなかった。
この中に赤と青のツートンの奴がいたら、本当に異色すぎてやばかっただろうなと思いながら、座席表が貼ってある黒板へと足を向ける。
席は横6×縦7で配置されていて両端の一番後ろの席は誰も座らないことで、合わせて40人ぴったしが座れるといった感じだった。
どうやら席順は一番窓側の列は前から出席番号1番、2番、3番…、その次の列は後ろから7番、8番、9番…、そしてその次の列はまた前から14番、15番、16番…というように蛇行したような感じになっているようだった。
だから出席番号4番の俺は一番窓側の列の前から4列目の列の席に、出席番号11番のカズは窓側から2列目の前から3列目の席だった。
「まさか、今年も去年と席の配置の関係が同じになるとはびっくりだね」
「ああ、そうだな」
カズが述べた通り、席の列だったりは少し違うが俺の右斜め前にカズがいるという席の配置の関係は去年と全く同じだった。
「いや~、それにしてもホントすごい偶然だな~。もしかしたら、本当に俺らは固い絆で結ばれているのかもね」
カズが笑顔でそう言う。
まあ、確かにクラスのことと言い、席の配置のことと言い、ここまで偶然が重なると奇跡のように感じてしまう。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
カズは自席にリュックを置くや否やそう言って教室を出て行った。
「ああ、いってら」
俺はそう言い、話し相手のカズもいなくなったので持ってきた荷物の整理を始めた。
提出物などを取り出そうと鞄をゴソゴソと漁っていたその時
「おっはよ~!ユウ!」という元気な声と共に背中に「バンッ!」という衝撃が走った。
痛ぇなと思い俺がそのまま動けないでいると
「あれ、ユウ、もしかして痛かった?痛かったらごめんね~」という全く謝罪の気持ちがこもっていない声が聞こえてきた。
「めちゃくちゃ痛ぇよ!少しは手加減しろよ、霞!」
そう言いながら、少しの苛立ちと共に声がした方向を向けると、俺にとって衝撃的な光景が目に入ってきた。
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