クラス発表と入学式
私立上代高等学校
この高校は学問に特別力を入れている名門校な訳でもなく、かといって部活に力を入れているスポーツ強豪校な訳でもなく、県内では文武ともにその成績は中の上、よくて上の下といったといった印象を受ける高校だ。
では何故俺がこの高校に進学しようと思ったのか。それは自由な校風に憧れたからだ。
バイトなどは当然のごとく許可されており、髪の毛を染めたりピアス付けたりマニキュア塗ったりするのも、他人が不快に思わない程度という限度をしっかり守れていれば良いとされている。
そして俺がこの高校を選んだ何よりの理由は、冒険許可校というところにある。
ダンジョンでの冒険というのは上位の層に入れば比較的安全と言われているが、それでもたまに死者とまではいかないも重傷者がでることはある。
そのため、生徒の安全と称してダンジョン内の冒険を許可する高校は非常に少ない。
おそらく学校側も余計な責任を負うリスクを増やしたくないのだろう。
最近は自分の子が悪くても他に責任を負わせようとする親もいるしな。
しかし、この高校は冒険を許可してくれているのだ。
その代わりに「当校は生徒のダンジョン内の冒険に関して一切の責任を負いません」と学校のHPに書かれているように、当たり前のことではあるが、冒険するもしないも自由だが全て自己責任でということらしい。
よく言えば「生徒の自主性を重んじている」、悪く言えば「生徒に任せきりで無責任」。
私立上代高校とはそのような校風を兼ね備えた高校である。
俺とカズは校門をくぐり、入学式が行われる体育館へと向かい、体育館の入り口前にいた受付の人に元気よく「おはようございます」と挨拶し、続いて名前を伝えた。
「黒瀬祐也さんですね。あなたは………1年C組の出席番号4番です。ではこれを付けて、体育館入って右奥側の席に座ってください」
そう言って左の胸ポケットに付ける花のようなものを渡された。
俺はそれを付けると隣で受付が終わったカズに話しかけた。
「カズ、何組だった?」
この高校は一学年A~Fの6組あるので、カズと同じクラスである確率は6分の1。
一年間の命運を決めるクラス決め。
クラスに知り合いがいるかいないかでは、最初の数週間のクラスの居心地の良さが天と地の差だから、絶対カズとは同じクラスになりたい。
「C組の11番だったよ。ユウは?」
「おお、マジか!俺もCだ」
俺らは「やった~!」と言いながらハイタッチした
「じゃあ、これで……4年連続同じクラスだね。今年もよろしくね、ユウ」
「ああ、こちらこそ今年もよろしくな、カズ」
俺らは指示された通り、体育館に入って右奥側の席に座り入学式の開会を待った。
中には俺らと同じ色と柄のブレザーを着た生徒たちがずらーっと座って、おそらく友達であろう人らと談笑していた。
中には黙って入学式の開会を静かに待っている人もいた。
「いや~、それにしても4年間同じクラスか。素直に嬉しいけど、少し運が良すぎて怖いな」
中学の時は4クラスしかなかったが、それでも同じクラスになる確率は相当低いはずだ。
実際は裏で色々考えられているだろうから、計算通りの確率ではないかもしれないけれど。
「まあ、俺らが固い絆で結ばれているってことじゃない?」
カズが得意げな顔でそう言う。
セリフがクサいなと思ったが、実際そうなのかもしれない。
それに対して俺は「そうなのかもな」と言って一応同調しておいた。
入学式は国家を歌い、校長、生徒会長、新入生代表の話を聞き、そして校歌は歌えもしないため上級生が歌っているのを聞いて終わった。
「新入生、在校生は自分の教室へ向かってください」
この放送が流れると、今まで入学式で静かだった空気がざわざわし始め、生徒たちが移動を始めた。
「俺らも移動するか」
そう言い、俺らも自分たちの教室へと向かった。
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