遭遇
ギルドを出た俺らは、冒険街をぶらぶらと街の中をふらついていた。
途中何軒かの店に入って、剣や鎧や盾など様々な装備品を見て回ったものの、なかなかしっくりする装備がなかったため、このような状態となっている。
唯一俺らが買った物といえば、魔道具である「イクスダース」。
あるモンスターを模倣して造られたものである。
見た目は10センチ大の巾着袋だが、中にはその見た目の何十倍、ものによっては何百倍の容量のものを入れることができる。
某猫型ロボットが持っているポケットのようなものだ。
またイクスダースは耐水性や耐熱性までに優れており丈夫でもある。
通常、冒険者は装備品用と採集品用の2つを常備している。
これなしにして冒険できずといわれるほどの必需品であり便利品である。
だがそんな便利品にも問題はある。
それはものの見た目の大きさこそ小さくなっているが、その重量は小さくならずそのままというところだ。
だからものを詰め込めば積み込むほど、当然その重量も大きくなる。
そして、いくらイクスダースといえども耐えられる重さの限界というものがあり、それを超えるとイクスダースが破れて、中に入っているものがざーっと溢れでてくる。
そしてもう一つ。
その問題はイクスダースはSW内でしか使えないところだ。
もしイクスダースを持ったままWGを通り現実世界に行ってしまえば、イクスダースが消滅してしまい、これまた同じように中のものが溢れでてくる。
このように魔道具の多くは現実世界に持ち込むと消滅してしまうから使用には注意が必要と言われている。
まあ、そういったことさえ忘れなければその使い勝手は悪くない。というかむしろすごく良い。
その買ったイクスダースを腰に付けて歩き回っていると、カズがトントンと俺の肩を叩いた。
「ん、どうした?カズ」
「あれ、美波と朱音じゃない?」
「え、どこだ?」
「ほら、あのアルファベットが書かれている大きな看板がある店の入口らへん」
カズがそう言い、指差した場所を見ると確かに霞と佐藤さんがいた。
2人とも制服の姿だった。
ここでもし俺1人だったら、その姿が見えたとしても声をかけずにスルーしていただろう。
しかし今回はカズがいた。
「おーい、美波~。朱音~」
カズは大声でそう言いながら、手を振る。
うん、さすがカズ。
そのコミュ力の高さは本当にすげぇなと思う。
そうすると、その声は2人にも届いたようで霞が手を振り返した。
「ユウ、行こう」
「え、あ、ああ」
カズが2人の方向に向けて走り出し、俺もそれに促されるようにして走り始めた。
2人のもとへ着くと、カズが霞と佐藤さんに話しかけた。
「2人とも買い物中?」
「うん、そうよ。因みにさっきギルドに行ってきて一応冒険者カードの作成だけしてきたところ」
カズの問いに霞が答える。
「ああ、そうなのか。俺らもさっきまでギルドにいたよ。2人とも何か装備品を買ったか?」
「いや、まだ買ってないよ。裕也君と和樹君は何か買った?」
「いや、俺らもまだだ。なかなかいい物が見つからなくてな」
「だよね~。私たちも同じ感じ」
そう俺が佐藤さんと話していると、カズが
「2人とも直接ここに来たの?」
「うん、そうだよ。だから制服のままなんだよね。やっぱりちょっと目立つよね」
確かにほとんどの人が私服の中に制服が紛れ込んでいると少しは目立つかもしれない。
「まあ、学校からこの子の家まで電車使っても30分以上かかるから直接来た方がいいかなってことになったのよ」
「え!30分以上もかかるんだ。朱音って………ああ、そうか、南中出身だったね。それくらいはかかるか」
その後少し会話を続け、きりがいいところとなった。
普段なら「じゃあ、これで」と言って別れていただろうが、というかそもそも話しかけていなかっただろうが、ここでカズがひとつ提案をした。
「ねえ、せっかくだし一緒に街を回らない?」
な……、マジか、カズ。
いくらコミュ力高いといってもここまでとは………。
俺がそう驚いている間に霞が「私はいいわよ」とその提案に賛成した。
そして霞が「朱音もいいでしょ?」と佐藤さんに聞くと、佐藤さんも「あ、うん、私もいいけど………」と答えた。
2人ともの返答がめちゃくちゃ早いな!
そんなことを思っているうちに後は俺の返事を待つことだけとなっていた。
「さあ、後残るはユウだけだけど?」
カズが俺にそう問いかける。
「まあ、俺も別に構わないけど………」
特に断る理由もなかった俺はその場の雰囲気に合わせて賛成した。
「よし、じゃあ一緒に回ろうか」
カズの元気な声が街中にそう響いた。
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