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WG

 俺は家を出た後、学校から家へ来た道を引き返した。

 といっても学校へ忘れ物などを取りに行くためではない。

 引き返す目的はもちろんWGへ向かうためだ。

 俺が今から向かおうとしているその場所は、家から学校前を通り過ぎてしばらく行ったところにある。

 だから必然的に来た道を引き返す形になってしまうのだ。


 歩いていっても集合時間には十分間に合うくらい余裕を持って家を出たが、これからの冒険への期待に胸を躍らせていた俺は少し駆け足でWGへ向かった。




 俺がWG前の広場に到着し、手元の腕時計を見ると時計の長針はちょうど9のところを指していた。

 ………1時45分か。

 想定していたよりも随分と早く着いてしまったな。

 だが、遅れるよりは10倍マシかと思い、席が空いているベンチに腰掛けた。

 

 平日の昼ということもあって、人の姿はそこまで見当たらないかと思っていたが、案外、子連れのお母さんやお父さんが多くいて広場は賑わっていた。

 また、ちらほら上代高校の制服を着た生徒たちも見られた。

 もしかしたら、俺と同じようにここを待ち合わせ場所にしているのかもしれない。

 

 しばらくの間、スマホを構って時間を潰していたが、それでもする事がなくなり、完全に手持ち無沙汰になってしまった俺は、WGをぼーっと見つめることにした。

 

 WG。それはこっちの世界とSWをつなぐゲートである。

 広場の中央にズドンと建っており、高さ5メートル、幅3メートルの縦長の長方形の形をしている。

 黒い鉱石で枠組みされていて、その枠の内部からは禍々しい白い光が放たれている。

 俺らはその白い光を通過することでSWに行き来できる。


 神の祝福当時、WGというのはもともと世界に数十個しかなく、ほとんどが辺鄙(へんぴ)なところや危険なところにあり、SWに行くのでさえ大変だったそうだ。

 そこで人工的にWGを作れないかと世界中の科学者たちが集結してその5年後、やっと世界初の人工WGが完成した。

 

 それはクロノタイルと呼ばれるダンジョン内で採掘できる黒い鉱石で、SWとこっちの世界で一致する座標に四角形の枠をそれぞれ作り、その内部にSW側からとある魔法数発を同時撃ち込むことで作れるということが判明した。

 俺は科学者ではないので詳しいことは分からないが、そうすることで天然のWGと似たような波動を枠の内部に作れたらしい。

 

 因みに天然と人工のWGの区別は、枠の色が白か黒かで見分けられる。

 今、俺の前にあるWGの色は黒、つまり人工WGだ。

 というか天然のWGは貴重な文化遺産となっているため、使用することはできないため、今は人工のWGしか使われていない。

 

 また、天然のWGの枠であるワイトーンと呼ばれる白い鉱石はSW内でも未だに発見されておらず、生成することも出来ないので、どこにあるのかと日々議論されており、神の祝福における七不思議の一つとされている。


 人工WGの見た目を不気味で嫌いだという人もいるが、俺は枠の黒色の鉱石と内部の白い光のコントラストが綺麗だから、まあまあ好きだ。

 しかし、天然のWGは人工とは比にならないくらいとても綺麗で、内部からは禍々しい光ではなく神秘的な光を放っているらしい。

 機会があれば是非見に行ってみたいと思う。


 


 それにしても春の暖かな日差しは睡魔を誘ってくる。

 高校という慣れない環境で学校初日にも関わらず疲れが溜まっていたのか、危うく眠りにつきそうになっていたところの俺に声をかけるものがいた。


 「ユウ、お待たせ。ごめん、少し待った?」


 顔を上げると、そこにはカズがいた。

  

 「……いや、ほとんど待っていない。大丈夫だ」


 実際は少し待ったが、それを言わないのが日本人の奥ゆかしさである。

 手元の腕時計を見るとちょうど2時だった。

 

 「というか2時ぴったりだからカズが謝る必要もないけどな」


 「でも、待たせたなら少しは悪い気がするじゃん」


 「まあ、そういうものか。じゃあ、行くか」


 「うん、行こう」


 そう言って立ち上がり、俺らはWGの白い光の中に入っていった。

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