第十八話 禁断の『X作品書籍化』の現状①
<< X作品書籍化の実態について >>
『書籍化』
それは全なろう作者の夢っ!
なぜなら作品が書籍化されることによって『¥印税¥』が手に入り、作品に『☆箔☆』も付きます。
そして何より『♡プロ作家♡』を堂々と名乗る事が出来るようになるのです。
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近年、なろう本家においてはランキング上位作品が次々と書籍化されており、いわゆる『なろう系』と呼ばれる作品群を形成するまでとなっています。
なろう系作品は書籍化にとどまらず、なろう作品を原作としたアニメやコミックスなどのメディアミックスも広がっており、さながらバブルの様な活況を呈していると言えるのではないでしょうか。
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明らかなバブル状態となっている本家ですが、一方でなろうの『裏』の方はどの様になっているのか気になるところだと思います。
そこで今回からは知られざる『X作品の書籍化』の実態について検証していきたいと思います。
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□ 方法
今回、検証に使用するデータとしてナイトランタン(Xサイトの運営)公式ブログにおける『出版作品紹介』の記事を用いることにしました。
この公式ブログへの出版作品紹介記事掲載は原則作者本人による自己申請制となっているため、ここに含まれないX書籍化作品も多少は存在すると考えられます。
ただナイトランタン公式ブログのお知らせはどのXサイトにおいても人目につく所に掲示されているため宣伝効果も高く、基本的に書籍紹介申請することのデメリットは無いと思われますので、ほとんどのX書籍化作品情報はここに出版作品紹介記事としてあがってくるのではないかと考えられます。
※出版作品紹介の掲載場所・紹介記事の例
※その他、書籍化作品について調べる方法としてはなろう18禁APIを利用して、作品のタイトル・あらすじ・キーワードに”書籍化”に関する単語が入っているものをピックアップする方法も考えられます。
しかしその方法だと出版後に非公開または削除されてしまった作品についてのデータを得ることができないので、今回は公式ブログの方をソースとして使用することにしました。
□ 『書報掲載申請』の紹介条件について
Xサイトにおける書報掲載申請(出版作品紹介申請)は本家と同じページで受付されている様です。
書報掲載申請
https://syosetu.com/syohourequest/input/
ここに書かれている『紹介条件』の中で特に重要なのは
・『小説家になろうグループへ本編を掲載中の作品であること』
・『個人出版ではなく、出版社・編集者を通した書籍・電子書籍であること』
あたりだと思われます。
なろうでは、2016年9月からダイジェスト版掲載が禁止される様に規約が改定されており、Xサイトもその対象に含まれているため、今回の検証においてもこの辺の年代による規約の変化も加味してゆきたいと思います。
【重要】ダイジェストのお取扱い、その他規約に関するお知らせ【追記あり】 - 小説家になろうグループ公式ブログ
https://blog.syosetu.com/?itemid=2004
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<< X作品における出版年度ごとの出版巻数の推移 >>
ナイトランタン公式ブログにおける出版作品紹介記事を集計した結果、全部で『712件』のデータを得ることが出来ました。
まず最初にXサイト全体における『出版年度ごとの出版巻数』について見ていきます。
なお今回のデータは2019年8月2日時点に取得したものを用います。
□ 結果
□ 考察
Xサイトにおける書籍化は2013年あたりから徐々に増加し始め、2017年でピークに達し、2018年以降は減少傾向にあることが見て取れます。
※なお2019年の数が少ないのは、今回の集計は年末まであと4ヶ月を残した8月時点のデータとなっているので当然と言えば当然です。
次はこのグラフをサイトごとに分けて見ていきたいと思います。
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【 データの加工について 】
サイトごとに分けてみたていきたいと思いましたが、公式ブログにおける出版作品紹介記事では掲載サイトの記載が無いものが大半(494/712作品)であったため、ここではデータに少し手を加え、記載が無いものについては手動で補完する作業を行いました。
補完方法は以下の通りです
・作品が存在する場合、その作品が掲載されているサイト
・作品が非公開または削除となっており観覧できない場合は、出版社・レーベル名から推測して補完
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<< サイトごとの出版年ごとの出版巻数の推移 >>
それでは掲載サイト名を補完したデータを用いて、先程のX作品総出版巻数をサイトごとに分けてみていきたいと思います。
□ 結果
□ 考察
掲載サイトごとに分けてみると、ムーンライトノベルズが最も多い割合を占めていることが分かりました。
推移としてみれば、ムーンライトノベルズの出版巻数は2016年にピークを迎え、2017年に微減、2018年には半減していることがみれとれます。
一方、ノクターンノベルズは2018年にはムーンライトノベルズをやや上回っており差が縮まっていることがうかがえますが、基本的には同様な減少傾向を示しています。
<< 今回のまとめ >>
X書籍化作品における年度ごとの出版巻数の推移について見ていきました。
今回分かったこととしては、全体的にX出版巻数は一時期に比べ減少傾向にあるということです。
このトレンドが今後も続いていき、書籍化がより難しい状況となっていくのか、それともどこかで底打ちし安定化するのか
今後が気になるところです。
<< 次回予告 >>
X作品紹介における『電子・紙書籍の割合』『作者ごとの出版巻数』『出版社・レーベルごとの出版巻数の推移』など。
乞うご期待。
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<< 補足:なろう本家における年度ごとの出版巻数の推移 >>
以前、ツイッターや活動報告などでも紹介しましたが、あらためて本家における出版巻数の推移を載せておきたいと思います。
なろう本家においてもXサイトと同じくピークは2017年となっているようですが、2018年以降の落ち込みはXサイトと比べると小さい感じとなっている様です。
なおデータ取得に使用したPythonコードについては以下のページをご参照ください
なろうR-18作品の書籍化情報を全取得するPythonコード - なろう分析記録 https://karupoimou.hatenablog.com/entry/2019/07/03/021209