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須之内写真館  作者: 大橋むつお
32/50

33・成人式の写真・1

須之内写真館・33

『成人式の写真・1』        



 今日から成人式の写真を始めた。


 本当は明々後日の13日なんだけど、数が多くてさばききれないのと、元来の10日であったことを大事にしようという玄蔵ジイチャンの心意気で三日前から始めている。

 古着を集めて格安で貸衣装もやって開始。


 今日は金曜日ということもあって大学生の新成人たちが沢山やってきた。

 衣装代、着付け込みで3000円と格安。衣装の柄やメイクなどはコンピューターでいくらでも処理が出来る。写真屋も楽になったというか、競争が激しいというか。


 今年、試しに『痛衣装』というのをコンピューター処理で始めた。


 主に男の新成人を当て込んで始めた企画で、アニメの萌えキャラを処理して、衣装にはめ込むのである。これは300円の割り増しが付く。なぜかというと著作権の使用料。


 で、これが当たった。


 柄に萌えキャラをいれることも出来るし、脇に萌えキャラを並べてツーショットやら、集合写真なんてのもできる。意外と女性客に萌えキャラの人気が高かった。

「ゆるキャラとか、AKBメンバーとかないんですか?」

 という声もあり、これは来年の課題。


 恥ずかしいことが一つあった。ショ-ウィンドウの見本写真である。


 女性のモデルは直美である。新成人とは二つしか歳は変わらないのだが、なんとも恥ずかしい。でも、仕事。杏奈と美花に頼もうかと思ったが、あの子達は二年先に本物の成人式を控えているので遠慮した。プロのモデルはもってのほか、儲けの半分ギャラで飛んでいく。

 もう一つ恥ずかしいのが男のモデル。なんと父の玄一がやっている。むろんまんまで出すわけにはいかないので、コンピューター処理のしまくり。まあ、原形を留めていないので良しとする。

「あのモデルさんどなたなんですか?」

 と聞かれたときの直美と玄一の反応は見物だった。


 昼休み、スタジオでウツラウツラしていると、シクシク泣き声が聞こえてきた。


「え……」

 と思うと、コンピューターのモニターの中で、萌えキャラが一人泣いていた。

「どうしたの?」

 直美が、そう聞くと、萌えキャラは涙堪えながら答えた。

――だって、あたしには一度もリクエストがないんだもん――

 その子はミイムという可愛い萌えキャラなんだけど、電子専門学校の学生が創った著作権フリーのキャラで、この子を使った場合は著作権の問題が発生しないため、料金300円の割り増しが付かない。

 人間というのは妙なもので、無料というとなんだか格下に思えてしまう。それで、ミイムを使うお客さんが居なかったのだ。


「ねえ、お父さん。ミイムも300円の割り増し取ってみようよ」

「そうだな……」

「ちゃんと原作者にはロイヤリティー払ってあげようよ」


 で、午後からはミイムも300円の割り増しを取ることにした。

 すると、10人のお客さんがミイムを使ってくれた。結局三日間で三十人ほどのお客さんが使ってくださることになる。


 それから、ミイムは直美のパソコンに住み着いてしまい、壁紙になったりアクセスの案内キャラになったり、直美にとっても癒しのキャラになっていくのであった。




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