表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

今日も明日も笑って。

作者: ちなつ。

 スーパー前の信号がない横断歩道で車の行列が切れるのを待っていた。

 右見て、左見て、また右を見て。

 なかなか切れないなあ。

 なんて。

 久しぶりに晴れた秋空を仰いだ。

 透き通った青色と甘い香りのする風と、ちょっと冷たくなった空気。

 秋らしい陽気。

 こんな日のお買い物。

 と。

 左側から来た1台の白い車が横断歩道の前で止まってくれた。

 合わせて右側の車も停車した。

 単純な私はこれくらいのことで嬉しくなる。

 親切にしてもらったって。

 そう嬉しくなってしまう。

 こんなことを言うと、笑われるんだけど。

 会釈をして道路を渡る。

 

「小さな気遣いで喜べるなんて幸せものだね」


 私は嬉しいけれど、そう感じない人もいるらしい。

 私は嬉しいから、ちょっぴり笑顔になれる。


 街はずれのスーパー。

 大体のお客さんはいおんに流れてしまうから、このお店はいつだってそんなに混雑はしない。

 混むのは年末年始くらいだろうか。

 でも、私はこのスーパーが好きだ。

 ゆったりとした雰囲気が好き。

 なんといっても、惣菜のサワラのフライが好き。

 美味しいうえに安いのだもの。


 買い物籠を抱えて、必要なものを籠に放り込んでいく。

 ツナ缶ってカツオのもあるんだね。

 ずっと、マグロだと思ってた。

 とりあえず買ってみる。

 珍しいものが好きだから。

 と、小さな女の子と目が合った。

 ピンク色のワンピースを着た3,4歳くらいの子。

 私と目が合うと、

 ニコリ。

 無邪気な照れ笑いをこぼすと、近くにいたママのもとへ駆けていった。


 可愛い。


 こちらも自然と笑みがこぼれてしまう。

 癒されるのに似た感覚。

 忘れていた何かを思い出させてくれるような。

 そんな感覚。


 レジに向かう途中でもう一度あの小さな女の子とすれ違った。

 私を見上げるようにして、

 ニコリ。

 今度は無邪気に元気な笑顔を向けてくれた。

 私も。

 ニコリ。

 笑顔を返す。


「えへへ」


 微笑みながら女の子は再びママのところへ戻っていく。

 お母さんは女の子に微笑むと、今晩食べたいご飯を問いかける。

 楽しそうにきゃっきゃとはしゃぐ親子。

 

 素敵だ。


 昔は私もあんなだったのかな。

 覚えてないけど。

 もしも、私もあんな風に笑えてたんだったら、

 もしかしたら、まだちゃんと人らしく笑えるかもしれない。

 

 自然に笑えた今日。

 久しぶりな気がした。

 女の子の笑顔が私の霧のようなもやもやを晴らしてくれたのかしら。


 今日も明日も笑って。

 笑っていられたら。

 いつかきっと。

 私もあの子のお母さんのようになれるかな。


 なんて。


 そんなことを思いました。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ