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深夜3時の友愛

作者: 魚谷幸

電話の向こうから聞こえてくるのは、たぶん何かの中継の音。

お金ないとか言って、スカパーを見ている友人にため息が出る。私が何度注意しても、彼は自分の生活を省みたりはしないのだろうけれど。

毎日レトルトカレーとチョコレート。うん、そりゃ体壊すよ。


ある日突然電話をしたくなった。私の大切な友人。

今は遠く離れて、彼は関東にいるらしい。

ここ数年ろくに連絡を取っていなかったから、どこで何をしているのか、生きているのか死んでいるのかさえ私にはわからなかった。

短い呼び出し音の後に懐かしい声が響いた。



「もしもし?」

彼の声は、すこし上ずっていて、驚いているようだった。

「よかった、電話番号、変えてなかったんだね」

「まぁ、そうね。で、突然どうした?」

「いやぁ、久しぶりにね、電話でもしようかと思って」


ここ最近、何かあったってことはない。むしろ何にもない。真っ白な日常。彼との同棲生活も2年目を迎え、結婚がなあなあになり始めた。新しい後輩は仕事がすこぶるできないが、愛嬌はある。部長の後頭部が少しずつさみしくなっていると、部署の人たちと毎日観察をする。昨日のプリンは彼の買ってきたものだと分かっていても食べずにはいられなかった。

こんな日常。ふと友人のことを思い出して、電話帳から彼を探した。


「毎日うまくいかないことばっかだよ」

彼の声は少しだけ、疲れたおじさんのそれになっていた。

私の知らない間に、私の知らないおじさんになっていく。


夢を追いかけて、地元を出ていった私の友人。もともとそんなに近くにいたわけじゃないから、そんなに苦ではなかった。年に数回食事にでも行けばそれでよかった。でも、少しずつ少しずつ、距離ができて、時間が流れた。



少しの沈黙。話すことなんていくらでもある。話したいことは何もない。

「その声は、わが友、草野氏ではあるまいか?」

私はふざけた声で、「友」を強調していった。

「おまえなぁ…」

そういった彼は、含み笑いをして懐かしいなと言った。



もう何年も前から、二人の関係を表す言葉を考えていた。

「親友」なんて言葉恥ずかしくって言えなかった。

でもそれ以上のことは、もっと恥ずかしくて言えなかった。



「もう3時だぞ、寝んでいいのか」

「私は明日休みだもん」

「俺はバイトだ」

「そら、寝んといかんな」


「友愛ってのはどう?」

「友愛?」

「そう、深夜三時の友愛だね。」



来年の夏は、また遊びに行こう。


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