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二人目の訪問者(ビジター)

「おほーーーー!リタちゃん!スタイル抜群!」


風呂場から母さんの奇声が聞こえるが、無視しておじから譲り受けたコンシューマ機のシューティングゲームに興じる俺。


集中力を奪われ、いつもなら簡単に突破できる一面ボスで痛恨のミス!


「ふうーーーー」


コントローラを片付け、風呂が空くまで手持ち無沙汰となる。


妹さまは既にベッドに入り、ぬいぐるみに囲まれたお姫様状態で眠りについている。


あれ、俺の寝る場所?妹様の横がほんの少し空いているが、いくらなんでもくっつきすぎだ。


まぁいいか。ソファーで寝てもいいし。


結局食べることにした夕飯のハンバーグがちょっとだけ塩からかったせいか、やたらと喉が渇く。


「冷蔵庫に確か…」


自室を出て台所に向かうと、女神が立っていた。


「ダメよリタちゃん!いくらなんでも素っ裸で!ジュンと鉢合わせしたらどうするの?そういうのをフラグって言うのよ!折らないとだめなの!」


風呂場からリタを呼ぶ母さんの声が聞こえるが、それは間延びして耳に届く。


「裸はダメ。記憶した…」


スタスタと脱衣所に戻るリタを呆然と見送る俺。


初めて直視する肉親いもうと以外の異性の素っ裸…。やせすぎだとは思うが、なだらかな弧を描く女性的な曲線…。


「お兄ちゃん、そんなに見つめちゃだめだよ?」


振り返ると、寝ていたはずの妹さまが現れ、いきなりパジャマの上着をまくりあげると、お子様特有のぽっこりしたぽんぽんを丸出しにしてペシペシとたたきながら俺に見せ付ける。


「お兄ちゃん!これを見てリタちゃんの体のことは忘れるのよ!」


上書きが!すらっとしたリタのラインが、ぽっこりおなかで上書きされる!!!


などと遊んでいると、母さんとリタがそろいのパジャマを着て脱衣所から出てきた。


「ジュン?見たの?」


母さんがニヤニヤしながら俺を見る。


「す、すまん、リタ」


「母上から男性が女性の裸を見た場合、謝るのは違うと聞いた。ゴチソウサマ?イタダキマス?」


「か、母さん!何を教えたんだ!」


「お兄ちゃん、食べるの?」


妹さまはいまだにぽんぽんさまを露出したままであった。冷やしますよ?


---


ずずっ…ずずっ…


「ここは大気に暴露されているせいか冷えるな」


ずずずずずずっ…


「しかし、残すはずのコピーが先走ってしまうとは」


じゅるじゅる…ぷはっ


「この学習装置によれば、この食べ物の摂取方法はこれがベストのはず…ふぅ。だいぶ温まってきたな」


夜の帳が下りた旧校舎。廊下の非常灯がぼんやりと光り、不気味な影を生み出す。


屋上機械室にも備え付けられた非常灯の下にうごめく影。


それは電気ストーブの前であぐらをかいて、プラ製のフォークを逆手に持ってカップのきつねそばをすする少女。


彼女が学習装置と呼ぶ壊れかけの液晶テレビに映し出されていたのは、某時代劇。


夜鳴きそばと呼ばれる日本そばの移動販売を呼び止め、小腹を満たす主人公がリピートで流れる。


「しかし、こちらの世界の食事というのは…学習装置との隔たりが。ん?だれだ?」


機械室の外に誰かが近づく気配があり、重厚な金属扉が遠慮がちにノックされ、静かに開く。


「あ、じゅんぺいくん!いた…忘れ物を だれ?です?」


「ん、おほん。拙者は…」


---


夜更けの住宅街をモーター音をわずかに響かせ、すべるように走る黒塗りのリムジン。


ハンドルを握る初老の男性が、バックミラー越しに後部座席のあるじに話しかける。


「お嬢様…そちらの女性、本当に留学生の方なのですか?」


「ええ、間違いないわ。宿泊先を書いたメモを無くしたと言うので、今日はもう遅いからうちのゲストルームに泊まってもらうことにしたの」


「奥様、だんな様の留守中、お嬢様をお守りするのはこの爺の役目。あのときのように羽目をはずされますと」


「もしかして、爺はまだあの流星雨観察のことを」


「当たり前ですお嬢様。年頃の男女二人がひと気のない場所で 「ういいいいいいいん」あっ、まだ話のと」


お嬢様と呼ばれた少女が手元のリモコンを押すと、高級車にありがちな運転席と客室を隔てる壁が無常にもせり上がり、爺やの話は中断された。


わずかに漏れ聞こえるインバーターの音だけが車内を支配する。


少女が再度リモコンを操作して車内灯をつけると、目の前に異国の衣装を身にまとった少女が浮かび上がる。


「ごめんなさいね。五月蝿くしてしまって。私は佐伯さえき美夏みか。先ほどお聞きしたお名前、リターニャさんとお呼びしても?」


美夏は自分の向かいの席に座る女性の名前を思い出し、間違いがないか確認をする。


車に乗る前から落ち着きのなかった少女は美夏に向き直り、じっと見つめると一礼をする。


「拙者、リターニャ・エル・タリウスと申す。正直行く当てもなく困っておったのは事実。まことにかたじけないでござる。ああ、リタと呼んでくれてかまわぬでござるよ」


いきなり飛び出してきた不思議な日本語に、美夏はとまどう。


「リタ…さん。その…どうしてあそこにいらしたのです?」


殆どの生徒が存在すら気づいていない旧校舎の屋上機械室。


そんな場所に部外者がいるのはおかしい。しかも夜中だ。


「その質問に答える前に…美夏殿。異世界というものをご存知だろうか?」



突然現れたもうひとりのリタの正体とは!

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