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異世界の姫は肉食獣であった

「もしもし、兄さん?わたしわたし」


「何の詐欺だよ。…『ん?だれって、妹…二次元でもないし、浮気でもないから』 あ、ごめん。隣に嫁がいるんだ」


「兄さん苦労しているわね」


「まぁ、監視の目があるから手短に頼むわ『だから、電話に耳をくっつけないで!』」


「…じゃあ、明日は休みだったわよね。ちょっとうちに来て手伝ってほしいことがあるのよ。部屋の片付けなんだけど」


「ああ、休みだけど…力仕事か?」


「そうよ。だんなさま不在だから男手が少なくてね」


「そういえばだんなさんいつ帰ってくるんだ?」


「まだ半年は無理みたいね…。新しいプラントの立ち上げが重なったらしくて」


「そうかー。月末に出るコンシューマゲームの新作を一緒に遊びたかったんだがなー。あっちはネットも満足に通じてないって言ってたから通信対戦は無理そうだし」


「さすがにゲーム機は持っていってないわよ…たぶん。遊ぶならジュンがいるじゃない?」


「あいつ上手すぎるから俺じゃ相手にならないんだよ。だんなさんくらいの腕前がちょうどいいんだけど」


「私は?」


「君はリアルボディへの攻撃をするからダメだ。連鎖組まれたからって腹いせに隣に座っている人の腹の肉をつまむとか地味に精神に来るから!」


「そう思うなら痩せなさいよ兄さん」


「ははは!嫁のメシが旨いから仕方ないよ!おわっ!こら、離せ!」


「まぁ、あんまり新婚さんを邪魔しちゃいけないし、そろそろ切るわよ…あら、もう切れてた」


---


母さんはリターニャをうちで預かると言い出し、彼女に部屋をあてがうべく、現在は物置となっている魔界を片付ける人員として白羽の矢が叔父に刺さり。


「そんなわけで明日、運動不足の兄さんをこき使って空き部屋を片付けるから…リタちゃん!今日は真菜の部屋を使って頂戴。真菜はお母さんと久しぶりに」


「やだ!お母さん寝相が悪いからお兄ちゃんと一緒に寝る!」


「ずいぶん嫌われたものね…。これが反抗期かしら!あと、兄妹あにいもモノより兄弟あにおとモノがいいわ」


「母さん、今話しかけても…ていうか何なのあにいもとかあにおとモノって?」


ただいま三つ目のハンバーグと格闘する金髪の少女を親子三人で眺めるという…。


余分に作られ冷凍保存コールドスリープされる運命にあった合いびき肉の塊は、油を引いたフライパンの上で両面をほどよく焼かれて、肉汁たっぷりの熱々状態となり、異世界からやってきたと思われる肉食系少女に捕食されていた。


---


今から一時間ほど前。


「くー」と鳴ったおなかの音で目を覚ましたリターニャ。


自分が寒々とした薄暗い部屋ではなく、明るく暖かい部屋にいて、見知らぬ大人の女性と少女に顔を覗き込まれていたので最初は驚いたようだが、害意が無いと分かると一瞬で適応した。


「主様の母上様と妹君様。記憶しました。私はリターニャ・エル・タリウスと申します」


「あら、ジュン。あるじさまって呼ばせているの?」


「いや、リターニャが勝手に!」


彼女はそんな会話をスルーしつつ、腰につけていた小さなバッグから何かを取り出して食べようとしたのだが、それを見た母さんが待ったをかけた!


「向こう」の世界における標準的な食事は、オレンジ色のパッケージでおなじみのあの固形食に近いものだった。


そんな彼女が機械室の冷蔵庫に入っていたやきそばパンを「食べ物」と認識出来たのは、偶然だったようだ。


最初はこちらのものをむやみに食べさせて大丈夫だろうかという考えが頭をよぎったのだが、既にやきそばパンを何本も食べ、炭酸飲料も飲んでいらっしゃったので…。


その炭酸飲料にしても最初はスクリューキャップというものを理解出来ず、刃物で飲み口を切断したという。


これが標準的な飲み水といわれて見せてもらったのは、空になった点滴の袋のようなもので、それには毒々しい紫色の液体がすこしだけ残っていた。


その袋にはシールのようなものが貼られていて、文字らしきものが印刷されていたが…読めなかった。


「ところで母さん。リターニャのこと、叔父さんにはなんて説明するの?」


「最初にジュンが言った交換留学生のホームステイでいいんじゃないの?」


まぁ、うちの学校はいろいろおかしいから。


「ところで、その交換留学生の嘘…どうして」


「ジュンは嘘をつくときに右手を腰に当てる癖があるのよ」


うん。気をつけよう。


---


「拙者は満腹でござる。ありがたきしあわせ」


時代劇のBDのせいか言語の解釈が若干バグっている感じがするが…おなかいっぱいになったようで良かった。


妹さまはリターニャに食休みをさせている間に入浴を済ませ、お気に入りのぬいぐるみを俺の部屋に移設する作業中であった。


「リタちゃん?一緒にお風呂どうかしら?」


母さんがにやにやしながらリターニャに尋ねる。


「風呂…検索…理解した」


リターニャはすっくと立ち上がるとやおら服を脱ぎ始め…。


俺はとりあえず自室に逃げ込むことにした。


リターニャの適応力もさることながら、主人公の家族も…。


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