5 Little-Red-Riding-Hood
久しぶりの更新になります。看板に偽りがないよう、西洋風にしてみようと努力はしましたー。
それは夜に出没するのだと。
赤いフードの女の子。
道に迷った、赤ずきん。
「また、変なものが流行ること」
と、若手刑事のイヴォンヌがため息をついた。
「赤ずきんが現れた所で、必ず行方不明者が出る。『赤ずきん』誘拐事件だとでも?」
「日本では神隠しって言うよ」
話に乗って来たのは、同僚のシュウ。この日本人は、神秘とかいうものに詳しいらしい。イヴォンヌには全く理解できないが。
「この国でもあるんじゃないの? 妖精に攫われたとか」
「あなたは、絵本の読み過ぎね」
呆れる、イヴォンヌ。そんな二人を茶化すように、
「可愛い可愛い赤ずきん。ひとりでどこにお使いだい?」
えらく芝居がかった仕草で近づいてくるのは、やはり同僚のロブだった。
「そりゃあ、おばあさんのお見舞いでしょ?」
「だったら気をつけな。途中でオオカミに会っても、話を聞いてはいけないよ」
「もう、いい加減にしてよ。休憩終わり。仕事に戻りましょう」
話を打ち切る、イヴォンヌ。
「でも、イヴォンヌ。どうして、赤ずきんは夜に現れるんだろうね」
ぽつりと呟かれたシュウの言葉に、彼女は鼻を鳴らしただけだった。
今日は、遅くなってしまった。
夜道を歩きながら、イヴォンヌは思い出す。昼休みの雑談。どうして、赤ずきんは夜に現れる?
迷子になったからだ。狼に誘われ、迷子になって。お婆さんの家に着くのが遅くなった。
ただのお伽噺。
向こうから、誰かが歩いて来た。
すれ違いざまに
「赤いちゃんちゃんこ着せましょうか?」
「チャンチャンコ?」
振り返ったイヴォンヌの喉が鳴った。
最後に彼女の眼に映ったのは、返り血を浴びて赤く染まった長い髪。