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第25話 このあたしを殺せるか

12月31日 アリシア(3/5)

「なぜ、僕の体を女にした。どうやって、僕のプライベートを調べ上げた。あなたは一体、僕をどうしたいんだ!?」


僕はいらだつあまり、思いつく限りのありったけの疑問をラムダにまくしたてた。


するとラムダは「そんな怒った顔をしたら可愛い顔が台無しよ。ほら笑顔笑顔」と落ち付き払った声で僕をなだめすかそうとした。


僕を怒らせている張本人が、お面で顔を隠しているような人間が、何を言うかと思うとむかっ腹が立ったが、ここで感情的になっては相手のペース、さらには術中ににはまってしまうと思い、落ち着くことにした。


「僕の今の質問に答えてはくれないのか?」


「残念ながら」


悪びれるそぶりもなく、いたずらっ子が面白がるかのようにあっさりとラムダは即答した。


こうもあっさりと返事をされると、こちらも勢いがそがれてしまうものである。




とはいえ、ここで引き下がるわけにはいかないので僕は懐から小さな木でできた直方体の物体を取り出した。


軽く操作してやると、脇に鋭い金属音と共にクロガネ色のエッジが浮かぶのが目に入った。


「答えないならば、このナイフをあなたの心臓にめがけて投げる」


冷や汗をかきながらの精いっぱいの脅し文句を放ったが、彼女は落ちつき払ったままだ。


「あなたにそれが出来るかしら?」


「できるさ」


「あなた、人を殺したことあるの?」


「ある」


売り言葉に買い言葉でついつい言ってしまったが、僕は人を殺したことなどなかった。


申し分程度の暗殺術は身につけているものの、実際に試すようなチャンスはなかった。


親父の元へ届く殺しの仕事は僕や親父が手を汚すことはなく、だいたいがゴルドのような実務専門の人間が請け負っているのだ。


僕はこれまで、親の愛情はあまり受けずに育ったとひねくれていたところがあるが、よくよく振りかえると、過保護に育てられている面もあるのかもしれない。




「甘ったれのおぼっちゃまがよく言うわ。まあ、もっとも、今はお嬢ちゃんだったっけ?試してみなさい」


余裕ありげに両腕を広げて、さあ投げてみよと無防備な構えを見せた。


しかし、声が若干震えていることを僕は見逃さなかった。


それなりに、脅し文句は効いている。


お面の向こうにはどのような表情を見せているのだろう。


「これまで、あたしなりにあんたを可愛がってきたつもりなのに、それでもあたしを殺せるものかしら」


そのセリフを言い終わるか終わらないかのタイミングで僕は人差し指と中指の間に挟んだ得物を相手に向かって全力で放り投げた。


「ぎえーっ!」


首を絞められた鶏のような声をあげると相手はうつ伏せに倒れ、あわててほふく前進すると、安楽椅子の後ろ側に隠れた。


「今のはわざと逃げやすいように投げた。次は確実に急所を狙う」


憐れな魔女は椅子の後ろで小さく丸まっていた。

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