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第21話 瞳に映る炎

12月28日 深夜 アリシア

「あの指輪は本物だったの?」


炎の中に薪をくべながら、僕はレオに訊ねた。




暗闇の中、お互いの顔をはっきりとは確かめることができない。


予定外の寄り道をしたせいで、僕たちは野宿をするはめになってしまったのだ。


こうして、時折、声の掛け合いをすることで、僕、レオ、マルコの3人がそれぞれ場を離れていないことが辛うじて分かる。


洞窟の外からは夜風の音が鳴る。


外で一夜を過ごしたら、凍死する可能性もあったところだ。


夜道を歩いていたところ、運よく洞窟を発見し、今、こうして暖をとっているのだ。


マルコによると、この森にはこういった洞窟がいくつかあり、作戦によっては盗賊が拠点として利用することもあるらしい。


勝手に使っていいのかとマルコに聞くと「分からない」とあいまいな返事だったが、凍えるような寒さの中、四の五の言っていられないので、勝手に使わさせてもらっていた。




「指輪の効果が本物かってことか?それは俺にも分からないな」


「分からないって……」


「うちの親父は、魔法効果のかかった武器や小道具なんかを作る専門の鍛冶屋なんだ。珍しいものも作るから、鉱山が閉まった今もお客の足は絶たない。親父の仕事場に行けば実験中の魔法道具がたくさんあるぜ。この指輪もその一つだ。工房に放置されていたんだが、完成品なのかあるいは失敗作なのかどちらなのかは分からない」


「だったら、本当に死ぬかもしれないんじゃないか!」


「死ぬかもしれないな。だが、時には気まぐれな人助けで、命を賭してみたくなるのが男のロマンってやつさ。女には分からない世界だよ」


「僕は男だ!」と、うっかり喉まで出かかったがなんとか踏みとどまった。




剣客の家に育ってきただけに、僕はこれまで命知らずの人間を何人も見てきた。


そして、そういった人間の多くは、案の定、早死にするものだった。


女を守るため、男のプライドを守るためだなんていう、マッチョイズムな美学を彼らはよく振りかざしたものだ。


僕も、かつては彼らにいくらか感化されていたようなところがあったので、大会に敗北した時、死をもって償えと言われてもそれを素直に受け入れることができたのだ。




だが、今はそれがどれだけ自分勝手な思い上がりなのかが僕には分かる。


レオが死んだら、おじさんもおばさんも酷く悲しむことだろう。


そしたら、僕も悲しくなってしまう。


「勝手なこと言わないでよ……」


「泣いているのか?」


「泣いてないよ」


僕が寒さで鼻をすすったので、泣いているのと間違われたようだ。




「お熱いケンカをしているところを悪いけど、おいらがいることもお忘れなく」


マルコが冷やかすように口をはさんだ。


「べ、別に僕たちはそういう関係じゃ……」


「どうだろうかな。おいらにゃ、いちゃいちゃしているようにしか見えないけどなー」


どこかで聞いたような童謡をアレンジした鼻歌を歌いながら面白がっていた。



これ以上、指輪の話を続けても冷やかされるだけだと思ったので、僕はそのまま寝袋に包まれ、そのまま目を瞑った。

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