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第19話 捨てる神と拾う神

12月28日 夕方 マルコ

えらいことになっちまったぜ。


親方から簡単な盗みの試練を与えられて、それをちょちょいと軽くこなして一人前の盗賊して認めてもらっておいらは晴れて大人の仲間入りをするはずだった。


晴れて大人デビューして、今までさんざん、おいらのことをウスノロだの根性無しだのとバカにした連中のことなんて見返してやろうなんて思っていた。


それがどうだ。




こいつくらいはチョロいだろうと目星をつけた小柄な姉ちゃんからバッグを奪い取とうとしたまでは良かったが、攻撃をしっかりとガードされて、しかも同伴していた兄ちゃんに脇腹を殴打されて、そのままばったりと倒れてしまった。


気が付いたら取り囲まれてて刃の先を突き付けられていた。


辺鄙な村からやってきた2人組だから、大したことはないだろうと高をくくってたのが、とんだ誤算だったぜ。


試練に失敗したものは死あるのみというのが盗賊の掟だ。


おいらも、潮時か。


短い人生だったな!


あばよ!とそう思っていた。




ところが捨てる神があれば拾う神があるものだ。


2人組のうちの兄ちゃんの方がどういう気まぐれなのか親分に交渉して命を助けてやるなんてことを言いだしたんだ。


だから、アジトに案内してくれってさ。


これにはさすがのおいらも呆気にとられちまったよ。


こんな世間知らずな人間がいるなんて信じられないぜ。




盗賊の親方ともあろう人間が、どこの馬の骨とも知らない旅人を相手にまともに取り合うわけがないじゃないか。


そもそも、盗賊の首領たるもの、アジトの場所を堅気の人間に知られた日には、そいつを生かして返すわけがない。


それこそ、兄ちゃんが公安に知らせたりしたら、盗賊一党、一網打尽にされるに決まってるし、親方だって組織の長としてそれは否が応でも避けたいはずだ。




だから、おいらはアジトにいくなんて、自ら死にに行くようなもんだと、やめておいた方がいいと、口をすっぱくして何度も言ったんだよ。


だけど「大丈夫だ。任せておけ」ってまともに取り合わない。


この兄ちゃん、もしかして、バカなのか?


姉ちゃんの方も、兄ちゃんに任せるだなんて言い出すしどうしようもない。


ま、おいらの命は一度捨てて、この2人に預けたようなものだし、あんまり偉そうには口を出せないんだけどさ。




そんなこんなで、活動の拠点の一つにしている山小屋に着いて、仲間に事情を話したんだけど、当然のように「親方の居場所を教える気はない」「さっさと責任とって死ね」とか、冷たいというか事務的というか、当たり前といえば当たり前の洗礼を受けた。


そしたら、兄ちゃんは「会わせてもらうまで居座る」だなんて言い出すんだ。


仲間もそれは困るみたいで「力づくで追い出すぞ」だなんて脅すんだけども、そしたら、姉ちゃんの方が何やら仲間に耳打ちしたんだ。


すると、仲間は一気に青ざめて、親方を呼ぶだなんて言い出したんだ。


何をささやいたんだろう?


この2人組は一体何者なんだ?

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