彼との物々交換
掲載日:2026/08/29
言葉にならない思いを少しずつ分け合う、小さな「交換」の物語。
ふたりの距離がゆっくりと縮まっていく温かな空気感を描いた、ポエム風小説です
わたしが得たものは……わたしが得たものは……
あたたかな陽だまりのポケットと
彼の古いマフラーに抱かれた冬の匂い。
彼に渡したものは
冷え切っていたわたしの指先と
ずっと胸に仕舞い込んでいた秘密。
ただの交換ごとのつもりが
秤にかけるたび、ふたりの距離が縮まっていく。
不釣り合いな価値を笑い合いながら
今日もわたしは
大切な何かを手放して
彼の温もりを連れて帰る。
でも、それは決して損などではなくて。
手放したぶんだけ、わたしの世界は彼の温度で満たされていく。
「また明日」と小さく呟き、マフラーに顔をうずめた。
白く揺れる吐息の向こうで、彼が優しく手を振っている。
冬の静けさの中で少しずつ縮まっていく、二人の距離と温かな温度感を描いたショートポエムです。
「手放すこと」が失うことではなく、相手の存在で満たされていく喜びへと変わっていく愛おしさを込めました。
冷たい風が吹く季節に、誰かの温もりを思い出すような余韻を感じていただけたら幸いです。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




