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第28話 自覚

 真由香ちゃんに教えてもらった校舎内を探し回る。

 私たちが出し物をやっている校舎とは反対にあり、展示物が多い棟だった。


「朔〜?」


 校舎内には人すら見当たら無いので声を出して探してみる。


 この階にはいないようだった。

 その後も2階3階と探してみるが見つからない。

 もう移動してしまったのかもしれない。


「メッセージにも返信ないし」

 階段を登り、最上階の4階にたどり着く。


 スマホの連絡帳【佐伯 朔】の電話番号を見つめ考える。……かけて、みる?

 悩んだ末、4階の教室の窓から外を覗き、上から人混みの中を探しながら思い切って朔に電話。

 初めて電話をかけた。


 コールがスマホのスピーカーから小さく流れ、なぜか緊張する。

 1回、2回、3回……これは出ないかと切ろうと耳から話すとコールが止まった。


「遥?」


 スピーカーから聞こえる聞き慣れた声。

 電話ってだけで少し言葉が詰まる。

 いつもと同じはずなのに少し違う気がして。

 スマホを持つ手に力が入る。


「あ、朔!い、今どこにいる?朔が私を探してるって真由香ちゃんに聞いたから、美術棟の方にいるって言われて今探してたんだけど」

「俺、ずっとクラス棟の方にいるぞ」

「……え?」


 まさかの真反対の場所。お互いに全然違う場所を探していた。

 通りで人もいないし、見つからないはずだった。

 真由香ちゃんがわざと反対を教えるわけないので、勘違いしたのかもしれない。


「そっか!じゃあ私がそっちに」

「俺が行く。何階?」

「えっと、4階の美術室に」

「わかった」


 言い終わる前に電話が切れた。

 こっちにきても何もないから、朔の方に行こうと思ったんだけど。

 私は美術室に展示された作品を眺めながら朔を待つ。


 10分くらい経った頃、美術室に足音が近づいてくる。


「待たせた……っ」


 走ったのか、息が上がっている。

 

「ゆっくりでよかったのに!階段もあるから結構大変だよねここ」

「割と遠いな……」

「わかる」

 私もここに登ってくるのに結構な体力を消費した。

 呼吸を整えた朔が私の隣に立つ。


「美術部の作品なんて初めて見たけど、結構面白いよ」

「そうか」


 朔はそれ以上話さない。


「朔、真由香ちゃんと喧嘩したの?」

「……」

「真由香ちゃん、目真っ赤に腫れてたよ」

「……そうか」

「朔が喧嘩することもあるんだね?」

「譲れないこと、だったからな」


 朔がここまではっきりいうのは見たことがない。

 私はそれ以上聞くのをやめた。


「それは仕方ないね!」


 美術部の作品は個性に溢れていて見ていて飽きない。

 ゆっくりと歩きながら一つ一つ鑑賞する。

「よし。そろそろ行こっか!」

 作品を見るのも程々に、そろそろ動こうとつま先を扉へ向ける。

 朔は作品を見つめたまま、私に聞いた。


「千雅はどうした?」

「約束があったみたいだから解散したよ。終わったらまた合流する予定」

「そうか。……。」


 少し間のある空気に違和感を覚える。


「……?そろそろ体育館の方、向かおう」



 教室を出ようと体を前に進めると朔に手を掴まれる。

 朔から引き止められることなんか初めてで、驚いて声が漏れる。


「えっ……」

 

 朔の真剣な眼差しが私を見つめて、離さない。



 

「来週の土曜日、出かけないか?」

「空いてるけど……みんなで?」



 朔の見たことない表情、行動。

 時が止まったと感じてしまいそうなくらい、自分の鼓動が大きく聞こえる。



「……二人で。」




 思いがけない誘いに戸惑う。

 この鼓動は変化に対する不安?それとも——

 

 答えは私にはわからない。

 

 文化祭は幕を閉じた。

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