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君がくれた声  作者: 中村雅
season1
1/12

放課後の音楽室

中学から付き合って、高校時代に別れを告げられた彼の事を今でも想ってる。彼への想いは今もずっと続いている。夢を叶えて彼に胸を張って会える自分になれたらその時は、、、




放課後の音楽室には、いつも同じ歌声が響いていた。


窓際に立って歌っているのは、中学三年生の澤田夏帆。まだあどけなさの残る顔なのに、歌い出すと空気が変わる。透き通った声が、夕焼けに染まった校庭まで届きそうだった。


その歌を、少し離れたところで黙って聴いているのが、同じクラスで彼氏の吉川春人だった。


「また聴いてたの?」

 

歌い終えた夏帆が振り向いて笑う。


「うん。今日も上手かった」

 

春人は照れくさそうに頭をかく。


夏帆は将来、歌手になりたいという夢を持っていた。オーディションを受けてはいるが、あがり症が原因で不合格が続いていた。


「ねえはる?もしオーディションがずっと受からなくて歌手になれなかったら、私どうしたらいいんだろう」

 

ある日の帰り道、夏帆は小さな声で言った。


自販機の前で立ち止まりながら、春人は少し考えてから答えた。

 

「落ちてもさ、歌が下手になるわけじゃないだろ」

「……うん」

 

「俺は夏帆の歌、好きだよ。それに、プロの歌手じゃなくても、今は色んな方法で歌を聴いてもらえる時代だからさ。諦めなければ絶対叶うわけじゃないけど、諦めたらそれこそ全部終わっちゃうから」


夏帆は何も言えなくなって、ただ頷いた。胸の奥がじんわり温かくなった。


数週間後、夏帆は大手事務所のオーディションに応募した。

当日、会場の外で待っていたのは春人だった。


「来てくれたの?」

「応援係だから」


少し緊張している夏帆に、春人はペットボトルの水を渡す。

 

「いつも通り歌えばいいよ。音楽室で歌ってるときみたいにさ」


夏帆は深呼吸をして、小さく頷いた。

 

「……行ってくる」


ステージの上は、まぶしいライトで客席がよく見えなかったけれど、夏帆は目を閉じた。


音楽室の窓、夕焼け、静かな空気。

そして、いつも歌を聴いてくれる春人の姿を思い浮かべる。


歌い始めた瞬間、不思議と緊張は消えていた。

音楽室で歌っていたときのように、彼に届くように歌うことだけを考えた。


最後の音を伸ばし終えたとき、会場が静まり返ったあと、拍手が起こった。

審査員、客席の人達の反応は、笑顔で溢れていて自分はやり切ったのだと安堵した。そして、、、

 


数日後、結果の通知が届いた。


震える手で封筒を開けた夏帆は、しばらく動かなかった。

それから、勢いよく立ち上がる。


「……合格、してる」


自分の声が信じられないほど小さかった。

次の瞬間、夏帆は家を飛び出していた。


公園のベンチで待ち合わせをしていた春人は、走ってくる夏帆を見て驚いた。


「どうだった、、」


春人が言い終わる前に、夏帆が一言。

 

「受かった」


春人は一瞬きょとんとして、それから顔をくしゃっとさせて笑った。

 

「ほんとに?」

「ほんとに!」


二人は思わず顔を見合わせて、同時に笑った。


「すごいじゃん……夏帆、やったな」


その言葉を聞いた瞬間、夏帆の目に涙が浮かんだ。

 

「……怖かったんだ。落ちるかもって、ずっと思ってて」

「でも受かった」

「うん……」


春人は少し照れくさそうに言った。

 

「だから言っただろ。夏帆の歌、いいんだって」


夏帆は涙を拭いて、笑った。

 

「うん...はるの言った通りだった」


それから夏帆は、レッスンに通い始めた。

学校と練習の両立は大変で、帰り道にぐったりしている日もあったけど、それでも音楽室で歌う時間だけは欠かさなかった。

そして、そこには、いつも通り春人がいた。


「今日も聴いてくれるの?」

「当たり前だろ。俺、最初のファンなんだから」


夏帆は少しだけ顔を赤くして、歌い始める。

歌声は、前よりも少しだけ強くなっていた。

 

夢に近づき始めた未来と、変わらず隣にいる人。

その両方が、夏帆の心を支えていた。

 

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― 新着の感想 ―
初恋なんですねぇ、初々しい(●´ー`●) また続きお待ちしてますねᴗ ̫ ᴗ
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