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episode 4 カラオケに着いてきた話。

「♪ふふん ふふふんふん ふん」

有希はクリスマス一色に染まり切った街を窓越しに眺めながら鼻歌を歌っていた。


イルミネーションに輝いて恋人たちが行き交う道をみていると、その活気に飲み込まれていきそうだ。


バイト終わり、スタッフ達の談話室として設けられている空き部屋で有希は窓際のカウンターテーブルで早めの夕食をとっていた。



「あずはちゃんの今日の夕食はおにぎりなんだ〜。けど、それなら家に帰って食べたらいいのに」


いきなり話しかけてきた同じくバイト終わりの倫。



毎回、シフト被るのが本当にウザい。


ただ希望する日がたまたまこの人と被るのだ。

学校も同じなので生活リズムが似ているのかもしれない。



「…今日は、この後また出かけるのでこれくらいでいいんですよ」


「出かけるの?合コン?」


「あなたじゃあるまいし…」


「だって、この時間から出かけるなら合コンかデートか?」

的外れすぎて頭が痛くなってくる。

デートする相手がいれば、今頃そっちに行っている。




「違います。友達とカラオケに行くんです」

一応訂正しておく。

面倒くさいが無視するのはこちらが嫌だからだ。


「カラオケ?え、一緒行きたい」



「ダメです」


「友達に聞いてみて」


倫がそう言い終わった瞬間、有希のスマホに着信が来た。

それは、今まさに話題にしたばかりの有希の友達だったのだ。



「もしもし?千里ちさと。今からバイト先出るね〜。じゃあね」

終了ボタンを押そうとした瞬間、スマホが手の中からなくなった。




「やほ〜千里ちゃんっていうんだねー。俺、波川倫って言うんだけど、今からあずはちゃんと一緒にカラオケ行っていい?___あずはちゃんのバイト仲間でーす。うん、OK」


口に出さなくてもわかる。アポ取り成功という顔だった。





「あずはちゃんの友達彼氏いる感じ?」


「いる感じですね」

いても倫の場合、手を出しかねないから千里と倫からは絶対に目を離してはいけない。



「そうなんだ〜。ね、寒そうだけど手袋持ってないの?」


赤くかじかんでいる有希の手を見て倫がそう言った。


「持ってないです。忘れたので」


「じゃ、貸してあげるよ」

倫は自分の手袋をカバンの中から取り出して有希に渡そうとした。


倫の意外な行動に有希は驚く。


「大丈夫ですよ。先輩が使ってください」


「俺、手の自由奪われてるみたいで手袋苦手なんだ。だから、貸してあげる」


寒さでほんのり赤くなっている顔に柔らかい笑みを浮かべた倫。

断りたくなったが、倫の手袋が暖かそうで借りることにした。



にしても、手袋が苦手なら持ち歩く必要もなかろうに。そんなことは思いつつも素直に厚意を受け取ることにした。




「ありがとうございます」


「どういたしまして」




この行動は果たして彼の本心なのか、それとも私を惑わすためのものなのか。


この時は判断がつかなかった。





「有希、やほ」

カラオケに着くと、千里が先についてフライドポテトを食べていた。


「…千里〜」

倫の件について色々と言いたくなったが口をつぐんだ。



「千里ちゃん、可愛いね〜俺のこと倫って呼んでね〜」


「倫くんでいいですか?」


「いいよ〜」

この2人はどうやらノリが合うらしく軽い調子で挨拶を交わしていた。




「有希、早速だけど何歌う?」



千里に促され、有希は適当に流行りの曲を選んだ。

倫に自分の歌を聞かれるのは嫌だが、ストレス発散ということで歌いまくったのだった。


「ねぇ、倫くんて有希の彼氏?」


「まだ《・・》違うかも〜」

倫が満面の笑みで言った。



「一生違うかも〜」

有希はその倫のセリフにイラついたので、同じ口調で返しておいた。


「それはフラグかな?」


「違います!」



倫は顔に伴って歌も上手かった。


どこを取っても完璧に見えてしまうのも仕方がないというものだ。



「夫婦漫才はやめてもらって有希もっと歌ってよ〜」


「いやだよ」

持ち歌はもう歌い切ったつもりだ。

別に知っている曲もあるが、歌い込んでないため音痴を露見するだけだ。



「俺も聞きたい〜」


「あ、これ歌ってよ」

ゴリ押しされて仕方なく、あまり歌い慣れていない曲を歌う羽目になった。


結果、音痴が露見してしまい、倫と千里に笑われてしまったのであった。


それから、倫からの有希への態度が少し友人的なものに変わったのをまだこの時は分からなかった。


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