episode 3 クリパ準備の話。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
有希はとびきりの営業スマイルを浮かべて、入店した小学生ぐらいの女の子3人組に声をかける。
「3人です…!」
1人の女の子が勇気を出して声を上げる。
もしかしたら初めて子供だけで来たのかもしれない。
可愛らしいと、思っていると後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「奥の席へどうぞ。プリンセス」
「え、?///」
女の子たちはその人の綺麗な顔に釘付けなってしまった。
有希は軽くその男の足を蹴った。
「波川先輩、ここはカフェ《・・・》ですから、そのような口調はご遠慮ください」
「なんだい?文句かい?プリティーなプリンセス」
キザなウインクと共に降ってきた言葉に有希は唖然とした。
「波川先輩。かなり自重してください」
「ちょっとじゃダメな感じね。おっけ、頑張る」
あっさり承諾するところから信用が出来なくなるんだよな。
「ね、波川くんと、梓原さん。明日って居残れる?」
バックヤードで有希と倫が話していると、店長がやって来てそう言った。
「はい、あ。もちろん追加給金貰えるなら手伝いますよ」
その先を言わずとも、と言った感じで倫が楽しそうに反応した。
「なんの話って顔可愛いね。あずはちゃん」
「それで、なんの話ですか?」
「今の、季節といえば〜やっぱりこれっしょってね」
店長は一枚のチラシを有希に見せた。
そこには、
『クリパはmore moreで!』という見出しがあった。
忘れていたが、今は12月。
聖なるクリスマスの季節だ。
___次の日___
「それじゃ、飾り付けを始めようか」
店長は大きな段ボール箱を抱えながら高らかに言った。
「わーい!」
わざとらしく喜ぶ倫と、有希、そして七美さんという三十代後半くらいの女性、4人で飾り付けを始めた。
「クリスマスツリーに、各自好きな飾りを飾って良いよ〜」
「じゃあ、俺あれ《・・》の形に似てるオーナメントかな」
「おい、かわいいオーナメントをあれ《・・》って言うな。どんだけ派手なんだよ」
店長が即座に突っ込む。
「俺、あれ《・・》が何かは言ってませんよ」
冗談混じりに言うが、マジでやめてくれと思った。
「いいから、ちゃんした理由で飾り付けしてね」
店長も呆れているではないか。
有希はそんなこと気にせずに、スノードームを並べたりする。色鮮やかな電飾を壁に飾り、リースを入り口のドアにかけ、花を飾ったりした。
だいぶ、クリスマスムードが出てきたところでBGMもクリスマスっぽくなる。
「綺麗〜」七海がうっとりしている。
「ここで、女子に告ったらムード抜群で余裕でOKされそうだな…例えば」
と、言いながら有希に近づき有希の顎を持ち上げると顔を近づける。
突然のことに有希が固まってしまっていた。
「このままキス…とか、ね」
倫の顔がどんどん近づいてくるので、逃げようとしたがその前に七海が間に入った。
「倫くん。有希ちゃん怖がってるでしょう」
「ありがとうございます、七海さん」
そんな中、倫は悪びれることなく笑っていた。
「にしても、クリスマスっていいよね〜。女子からの人気が増すし、それに…」
女子女子って、と思っていると急に倫は子供の顔になった。
「サンタさん来るし…」
「サンタさん…?」
この年齢になってサンタさん…?
別に悪くはないと思うけど、この女子にしか目がないこの男がサンタさんなんていうかわいいものに憧れるか?
「今年も可愛い女の子、お願いしよ」
そこはブレなかった。
そしてその願いは果たして叶ったのか、聞きたくもない。
クリスマスまであと3週間。
今年は一体どんなクリスマスになるのだろうか。




