8話 スライム討伐
さて、スライムの討伐に行くことになった。この世界の魔物には魔石がなく、固有の部位を討伐の証拠として持ち帰る。ゴブリンなら耳だ。スライムには耳もなく、固有の部位がないため、死体を持ち帰って重さで何匹倒したか測定する必要がある。
スライムがいるエリアに到着した。スライムはボールみたいにまん丸で、転がるように動く。目などもなく、水色の半透明なボールだ。動きは遅く、棒でもぶっ叩けば破片となり死ぬ。スライムは何でも食べるが弱いので、基本的にはスカベンジャーだ。死体やゴミなどを食べている。一見無害そうに見えるが、定期的に間引かないと大量に発生してしまうため、討伐依頼が出される。弱いし、死体を集めるのが大変で、依頼自体は不人気だ。
さて、1匹見つけた。コロコロとゆっくり転がっている。
「さて、やるか!」
あ、なんかかわいいな。プルプルしていて、何だか癒される。
「よし、やるか!」
おっ、ゴミを取り込んで食べてる。シュワシュワしてる。やっぱ、可愛いじゃねーか。
「俺はやるって言ったらやる、やるか!」
しかし、俺の強い確固たる意志とは裏腹に、体は全く動かなかった。しばらく、見つめていた。
で、出来ない。
こんな可愛い生き物を殺すなんて出来ない。
生前では殺生するなんて小さな虫や害虫ぐらいだ。
俺には生き物を殺すなんて出来ない。
こんなんでは魔物と戦うなんて絶対に無理だ。
俺の心は無惨にも、パスタのように真っ二つに折れた。イタリア人は怒るかもしれないが、パスタを茹でる時に、俺はパスタを折る派だ。結構、良い音するんだよな。
俺は素手でスライムを持ってみた。食われるかなとちょっとビビったが、特にそんな事は無かった。どうやら生きてる物は食べないらしいというか、明らかに逃げようとしてる。そうだよな。最弱の魔物だもんな。食おうとしたら、逆に殺されるもんな。
プルプルと震えてる。こいつは可愛いので連れて帰ってペットにすることにした。
結局、討伐は失敗に終わった。波乗りおじさんは、冒険者としての前途に暗雲が立ち込めるのを感じていた。




