4話 平凡のウェーブ
ついにスキルの授与式の日が来た。ウェイブリッジ家の大広間で緊張したおもむきの家族がアルを見つめていた。ステンドグラスを通した光が差し込み、幻想的な雰囲気を醸し出している。
そういえば兄のレオンもここで「堅守の騎士」を授かったのだな。贅沢は言いません。どうか悪いスキルじゃないように。
父は祭壇の前で立ち、静かに言葉を発した。
「さぁ、アルド、前へ」
アルドは白い儀式用のローブを着て、ゆっくりと前に出た。祭壇の上の水晶球に両手を置いた。
水晶球が水色に輝き始めた。光は次第に強く、なるはずがランプの灯り程度しか明るくならなかった。若干どよめきが起こる。波の形の輪郭が浮かび上がる。
?
神官は見たことない模様に戸惑い、スキル名が分からなかった。こ、これは波か?とりあえず、この場を切り抜けるために波を横文字でカッコよく言い放った。
「『平凡のウェーブ』」!
家族は困惑した。聞いたことのないスキル名。良いものか悪いものかも分からない。少なくとも、水晶の光具合から強いものじゃないとわかる。
広間は静まり返っている。沈黙に耐えかねた父はアルドに話しかけた。
「アルド、スキルは使えそうか?出来るならば実演してみてほしい」
「はい」
心でスキルの発動をイメージしてみた。
ふわっと微風が吹いた。
ん、今のは空気が波になったのか?
「すみません、もう一度行います」
今度は地面に向けてスキルを発動してみる。しかし、床はびくともしない。硬いからかな?
「すみません、水を持ってきてくれないでしょうか?」
兄のレオンはコップに水を汲んで持ってきてくれた。
「ありがとうございます、兄さん」
気持ちを改めて、スキルを念じる。あれ?確か詠唱みたいなを唱えると様になるかもしれない。よし。
「えっと、聖なる大地よ?未知なる水の大海原よ?我に力を与えてよ?」
「平凡のウェーブ!!」
不安な心から、出た言葉は、語尾が高くなり、疑問系で唱えてしまった。しかし、最後のスキル名はきっちり言えた。
あまりにもダサい詠唱と間抜けなスキル名に兄のレオンは吹き出した。
「ぶはっ」
その時だった、コップの水が行きよいよくこぼれた。
やった。成功した。前世では考えられない、超常現象だ!興奮と誇らしい気持ちでドヤ顔でみんなを見返した。
あれっ、何だこの微妙な空気は?
「…アルド、素晴らしいぞ、下がってよい」
神官も家族も分かってしまった。これは役に立たないスキルだと。これでは敵を倒せないし、味方を助けることも出来ない。ましては水が無い場所では、何も出来ない。
スキルを授かったあの日から、僕のスキルに関しては話してはならないと言う、暗黙の了解が周りには出来ていた。幼い僕を家族は傷つけないに気を遣ってくれたのだ。
僕は家族の役に立たなければ、いずれ、家を出なくてはならない。ん?家を出た方が平凡な生活を送れるのでは無いか?それも良いだろう。




