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波乗りおじさんの異世界冒険(こ、これは?電子レンジ!?)  作者: 海岸線の夕日


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28/28

②スライムと神の領域、そして新たな世界へ

いつからそこにいたのか、気づけばトーマスがそっと俺の肩を支え、うつむく俺を立ち上がらせてくれていた。


「久しぶりだな、地獄の爆熱裁断者様」


俺はまたしても顔を覆い、床に崩れ落ちるしかなかった。


「やめて……その二つ名は、やめてくれ……」


〜〜〜


研究者の説明は簡潔だった。スライムの世話を頼まれていた冒険者トーマスが、スライムが増えていることに気づき、魔物研究所に連絡。研究所はすぐに家を封鎖した。人口飼育下でのスライムの分裂は初めての事例だという。その噂を嗅ぎつけたあのジジイも、どこからか現れたらしい。


スライムの飼育は謎だらけで、普通は餌を食べても少しずつ小さくなり、やがて消えてしまう。なのに、俺のスライムはなぜか分裂して増えていた。


「まさか、水を与えていたとは……盲点でしたね」


いや、普通ペットには餌と水だろ? と思ったが、これは地球の常識。こっちの世界では違うのかもしれない。そもそもスライムをペットにする発想が稀だから、誰も試さなかっただけなのだろう。


結局、一匹を手元に残し、残る二匹は研究所が引き取ることになった。みんなは何事もなかったように解散していく。「あまり増やさないように」と研究者に釘を刺され、トーマスは「また必要なら世話するよ」と爽やかな笑顔で去っていった。はあ……イケメンは絵になるな。


最後にジジイに文句を言おうとしたが、老紳士は風のように消えていた。


「それじゃあな、リリアちゃん」


一人、部屋に残された俺は考え込んだ。あのクソジジイを小一時間問い詰めてやりたい。胸パッドはまだしも、お股カップはないだろ。いや、もうこの際だからお股カップも百歩譲って認めよう。だが、なぜあんなにキツく縛る必要があった?


……待て。


あるぞ。


アリエール。


王子との件だ。


俺のお股を圧迫

→ 俺の思考を圧迫

→ 王子に同情

→ プロジェクト発動

→ 王子の秘密を知る


セレナとの件だ。


俺のお股を圧迫

→ セレナの握りが空振り

→ 殺されかける

→ 転生者であることがバレる

→ セレナの秘密を知る


ジジイは、お股カップをキツく縛るというただ一つの行為で、見事に二人を結びつけた。勇者と王子が次期政権を担う。王国は安泰だ。計算されていた……すべてが。もはや神の領域じゃないか。


俺は恐ろしさに震えた。ガクガクと。


「そんな訳ないじゃろ、考えすぎじゃ」


いないはずのジジイの声が、確かに耳元で聞こえたような気がした。





ふと目をやると、スライムがドアの前をゆっくりコロコロと転がり、ウロウロしている。まるで外に出たいと訴えているようだ。スライムは癒しだ。俺はお前を絶対に離さない。





幸せとは、

こういうものなのかもしれない。

去った者の足音が消えたあと、

残された空気が、静かに自分の股間をキュッと締めつけること。

そしてその締めつけさえ、いつしか愛おしく思えてしまうこと。





開いた窓から風が入ってくる。

冷たく、湿り気を帯びた風が。

どこか遠い海の匂いと、

焚かれなかった薪の煙の記憶を運んでくる。

耳元で、またジジイの声がした気がした。

振り向けば、誰もいない。

誰も答えず、誰も追わず、

ただ世界が、ゆっくりと扉を閉めていく音だけが聞こえる。





もう、いいさ。

すべてが計算づくだったとしても。

この締めつけが愛おしいと思える今この瞬間、

新しい世界の扉を開こうとしているのだ。





END

ありがとうございました。これでもう完結です。

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