①スライムとお股カップの黒幕
俺は一時的に西海岸の港町に帰ってきた。理由はただ一つ――飼っているスライムの様子が気になったからだ。
町の広場に着くと、子供たちが騒がしく遊んでいた。何だ? ケンカか? いや、なんか叫び声が……。
「お前の力なんてそんなもんか!受けてみろ! 必殺技だぁ!」
「震えるぞフード!!」
俺は思わず吹き出した。
「ブホッ」
「燃え尽きるほどヒートテック!! 刻むぞ血液のビートマニア! オーバーテクノロジーのマイクロウェーブ!! オラオラオラオラ〜!」
「ぎゃーっ! やられたぁ〜!」
子供たちはめっちゃ楽しそうだったけど、俺の顔はみるみる真っ赤になっていった。
……なんでだよ。なんでこの田舎町のガキどもが、俺の黒歴史フルコンボ詠唱を知ってんだよ……?
〜〜〜
家に近づいた瞬間、異変に気づいた。 家の前に、制服姿の警備員が二人立っている。
「え? 何? 何かあったのか……?」
嫌な予感しかしない。
「あの、ここ俺の家なんですけど……」
「あなたはアルド・ウェイブリッジ様で間違いありませんね?」
「……はい」
「どうぞ、中へお入りください。おい、アルド様がお戻りになったと伝えて、トーマスさんを呼べ」
「何があったんですか?」
「中に入れば分かります。どうぞ」
恐る恐る中に入った瞬間――
「ええええええ!!」
スライムが……増えてる!?
元々1匹だったはずのスライムが、今や3匹。
それぞれ小さな囲いに入れられ、「1号」「2号」「3号」と番号まで振られている。
「おっ、リリアちゃん、おかえり〜」
聞き覚えのある、クソほど嫌な声。
視線の先には、魔法部門の頂点に君臨するあのジジイがニヤニヤしながらソファにふんぞり返っていた。
……お前かよ
「フォフォフォ。わしじゃ、久しぶりじゃのう?」
……ああ、広場のあの詠唱ごっこ、絶対こいつの仕業だろう。
「何の話じゃ?」
相変わらずこっちの心が丸見えかよ……一体何者なんだお前は。
「お主、またナニか隠しておるのぅ?」
はいはい、いつものブラフですね?
――と思った瞬間、ジジイの目が急に鋭くなった。
まるで底の見えない井戸の底からこちらを覗き込んでいるような、冷たく澄んだ視線。
静寂が、部屋の隅々まで重く沈殿する。
あれ?
ちょ、待てよ。
商会の異世界商品の開発者が俺だという事は極秘だが、この爺さんならもしかしたら、、、
やば?転生者だってばバレてるの?
「何じゃ、お股はもう隠しておらんのか」と残念そうに呟いた。
えええー!そっちのことか!
転生者がバレたのかと思った。
まぁ、このジジイは俺を「リリア」に変えた張本人なんだから、お股カップも胸パッドも全部知ってるはずか……。
……やっぱりブラフかよ。毎回ドキドキさせんな。
「あまり、お股カップをつけすぎるなよ、癖になるぞ」
ぇぁああううええええええぇぁ?!
し、知っているのか?
俺が密かにお股カップを着けて、鏡の前でフリーダムタイムをエンジョイしてる事を!!
そして、もう完全に癖になってるっつーの!!
うう、恥ずかしい。
その時だった。走馬灯の様に、過去のお股カップの苦行の記憶がフラッシュバックした。脳裏に稲妻が走るかのように、ある考えが浮かんだ。
てゆーか、
もしかして?
こいつじゃね?
俺にお股カップと胸パッドの着用を考えたのは?
「わしじゃ」
絶対、こいつ人の考えが読めるだろ!!
え?
今、こいつゲロった!
おまえかぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあ!!!!!
俺はただ、両手で顔を覆って、床に崩れ落ちるしかなかった。




