20話 思考の渦と致命的な過ち
人とは、考える生き物だ。
スライムとは違うのだよ。
まるで異世界の名言みたいなことを考えていた。真夜中なのに、なかなか眠れない。様々な思考が頭の中で鬼ごっこをしている。
生きるか死ぬか——
が問題では無い
家族を守るとか
魔物を倒すとか
世界を救うとか
が問題では無い
これは俺のお股の——
日中だけお股をギュウギュウにされるか、24時間お股をギュウギュウにされるかが問題なのだ。
〜〜〜
第一王子、クリストファー殿下は、絵に描いたような貴公子だった。金髪は陽光のように輝き、青い瞳は遠くを見つめるように澄んでいた。宮廷では「最も理想的な結婚対象」と囁かれながらも、彼はすべての縁談を断り続けていた。
婚約の話に嫌気を刺して、引きこもりがちになっている。ほとんど彼とは会話なく、女装がバレる要素は——多分無いだろう。
正直、羨ましい。絶世の美女とも結婚できるはずなのに。
でも時折見せる悲しそうな目に、何故か心が痛んだ。
奴も——好きで——
王子になった訳じゃない。
俺も——好きで——
女装してお股をギュウギュウされる35歳独身の波乗りおじさんになったわけじゃない。
間違いない、似ているな。
アルド、いや、リリアは軽く頭がおかしくなっていた。お股が圧迫されているからなのか、思考が極端に狭まっていた。王子とリリアの境遇は全く似ていなかったのに、何故か自分自身を重ね合わせて、同情していた。恐るべき、お股カップの破壊力。
運命に翻弄される者同士の、危険な共感。リリアは自分の思考に溺れて酔っていた。
王子様と密かに仲良くなって、王様にお股カップの免除を進言してもらおうプロジェクトは、一度は断念したはずだった。
俺のお股様が1ミリでもバレる可能性は排除しないと危険だ!絶対に、ダメ!大事なことなので、何度も言うけど、答えはNOだ!お前は24時間も耐えられるのか?1日の終わりのエンペラータイムのフリーダムが無いのだぞ?自由だぁぁあぁが無いのだぞ?本気か?頭が腐ってるのか?おい、聞いているのか?
お股様があれほど警鐘を鳴らしていたのに、、、リリアには届いてなかった。そして、プロジェクトを発動してしまったのだ。
アルドことリリアは致命的な間違いを犯してしまったのだ。




