15話 衝撃の真実
王の間は想像以上に厳かな雰囲気だった。玉座に座る王は、俺の実演を一言も発せず、じっと見つめていた。もちろん、無詠唱だ(詠唱を省略してるわけではないんだがな、、、)。食材が湯気を立てて温まるのを確認すると、王はゆっくりと頷き、隣に立つ先ほどの老紳士に目配せした。
「審査は合格じゃ。」
王の声は低く、重々しかった。
「しかし、お主には、この場で一つだけ重大な任務を託す。これは国家機密だ。決して外に漏らしてはならぬ。」
任務? 国家機密? いきなり何の話だ?
老紳士が前に出て、説明を始めた。
「実は、この国は今、重大な危機に直面しておる。北の辺境に現れた魔物のボス──『炎喰らいの巨狼』の討伐に、先日派遣された勇者一行が失敗したのじゃ。」
勇者が失敗? そんなことがあるのか? 勇者といえば、この国で最も強力な存在のはずだ。5歳のスキル授与式で判明し、すぐに王に仕える特別な存在。確か、歴代の勇者は皆、男だったと聞いている。
「その魔物のボスは、外見は巨大な狼のようじゃが、火や魔法の波動に極めて敏感な性質を持っておる。故に、討伐チームは一切の火や魔法を使わず、接近しなければならぬ。温かい食事も、湯浴みも、全て冷たい水で凌がねばならん過酷な旅路じゃ。」
なるほど、だから俺の、火も魔法も使わずに物を温めるスキルが注目されたのか。
「そして、問題はここからじゃ。」老紳士の表情がさらに険しくなる。「今回の勇者は、歴代で初めての女性、しかも若き娘じゃ。過酷な環境と、冷たい水しか使えないストレスに心が折れ、『温かいご飯が恋しい』などとぶつぶつ呟きながら、ボスにたどり着く前に戦意を喪失してしまったのじゃ。」
まぁ、無理もない。若い女性に、長期にわたって温かい食事もお風呂もなしの生活は酷だ。
「ボス討伐の失敗は、各地に棲む魔物たちを活性化させ、国全体の脅威となっている。この事実が国民に知れれば、不安と不信から暴動が起き、政権そのものが揺らぐ。故に、ボスの存在も、討伐失敗の事実も、全ては最高機密なのじゃ。」
あーだからうちの領土も大変な事になってるのか?なんかやべぇ話だなおい。
王が玉座から身を乗り出した。
「そこで、お主の出番じゃ。お主の『温めるスキル』は、火も魔法も使わぬ。魔物に感知される心配がない。討伐チームに加わり、隊員たちに温かい食事や飲み物、可能ならば温かいお湯を提供できれば、戦力と士気は飛躍的に向上する。」
なるほど、確かに理にかなっているがちょっと待ってくれ。これは家族を救うとかゆーレベルの話ではない。国家を救う一代プロジェクトじゃねーか。重い、重すぎる。
スライム討伐に失敗し、噛みつきタートルと死闘を演じた俺には荷が重すぎる。
ここは恥を忍んで断ろう。俺には無理だ。




