14話 転生者だとバレたか?!
王城の審査室を抜け、次なる部屋へと案内された。そこには、魔法部門のトップと名乗る、白髪の長い顎鬚をたくわえた老紳士が一人で待っていた。部屋は先ほどよりも質素で、壁一面に古びた書物が並んでいる。
「よく来たな。ここまでの審査を突破した者は、お主が初めてじゃ。まぁ、ほとんどの者は詐欺まがいじゃからのう。」
老人の声は低く、しかし鋭い眼光が俺をじっと見つめる。
「早速だが始めてもらおうかの。」
前回と同じく、用意された食材で手順は変わらない。深呼吸をし、恥ずかしいが勢いが命だ。
「震えるぞフード!燃え尽きるほどヒートテック!!刻むぞ血液のビートマニア!オーバーテクノロジーのマイクロウェーブ!!オラオラオラオラ〜」
またあの「オラオラ」を三分間。老人は微動だにせず、水晶玉に手をかざしていた。が、食材からは確かに湯気が立ち上り、無事に温めることが出来た。
「……ふむ。」
老人がゆっくりと口を開いた。
「確かに温まっておる。審査室の報告通りじゃな。」
ほっと一息ついたその瞬間、老人の目が細くなった。
「ところでお主、何か隠してるのではないか?」
な、何っ!?思わず声にでそうになる。
やべぇー、まさか、転生者の身分がバレたか? 冷や汗が背中を伝う。ここで俺が転生者だってバレたら、どうなる?もう家族には会えなくなるかも。何故、バレた。あの恥ずかしい詠唱か?知っているのか?あのアニメを!!も、もしかして、この爺さんも転生者か?
「あの変な詠唱は、いらんじゃろ。」
老人が呆れたように言う。
「詠唱などせずとも、魔力の波動は一切感じられぬ。お主の技は、魔法ではない。そうじゃな?」
「……はい。」
良かったぁ〜。1ミリもバレてなかった笑。びっくりさせんなよ。ったくもー。
「この世のスキルは、大きく分けて二つ。物理の技と、魔法の術。お主のそれは、明らかに物理に属する。無から何かを生み出す魔法とは根本が違う。見たところ、食材そのものから熱を発生させておるみたいじゃな。」
鋭い。まさにその通りだ。マイクロ波の原理を、この世界の言葉で見事に言い当てている。何者だ?この爺さん、凄すぎじゃないか?まぁ、流石に転生者までは見抜けないか。
「本来なら、誰にでも再現可能な技術であれば、最高の評価を与えるところじゃが……」老人は少し困ったように顎鬚を撫でた。「お主のは、お主のスキルに依存しておるのじゃな、他のものには出来んな。」
ここで老人は不意に、奇妙な質問を投げかけた。
「一応、確認じゃが、お主は男で間違いないか?」
「え?」
思わず声が上ずってしまった。どう見ても35歳の男だろう。顔も声も、紛れもない「おっさん」だ。
「はい、その通りです。」
「ふむ……まぁ、悪い顔はしておらん。何とかなるじゃろう。」
何がなんとかなるんだ? 男であることが、ここで何か問題になるのか? 訳が分からない。
老人は深く考え込むような素振りを見せた後、ゆっくりと立ち上がった。
「よかろう。王に謁見する前に、一つだけ忠告しておく。そのヘンテコな詠唱はやめろ。」
ですよねぇ〜、はっきり言って恥ずかしいし意味ないからな。
最後の審査──王の前での実演が待っている。




