12話 食べ物を温めただけだよ?
俺にもそんなふうに考えていた時期がありました(2回目)。
異世界ものといえば、ズバリ銃だろ。剣と魔法の世界で、定番だろ?銃を作って、無双する騎士団。魔物も銃なんか見たことないだろ?
しかーし、この世界には火薬が無いのだ。だって、マッチすらないもん。もちろん、ライターもないのよ。魔物には魔石が無いから、魔道具ももちろんない。じゃあ、どうやって火をつけるのかって?生活魔法があるだろって?これが無いんだなぁ〜。
答えは簡単だよ。この世界には、アンポってゆー特殊な木がある。この木を擦ると簡単に火がつく。言うならば、マッチみたいな物だ。マッチの先端が無い二つの棒を軽く擦ると、あら不思議。簡単に火がつくのだ。
スキルは5歳の時に一つしか授からない。そして、その一つのスキルに縛られるのだ。だから、この世界では5歳で人生が決まると言っても過言では無い。水やら火やら風やら、色々な魔法を使えってわけじゃない。そして、ここが肝心なところなんだけど、スキルってゆーのは、基本的に対魔物用だって事。だから、生活に役に立つようなスキルはあんまり無いと言うか、一つしかない重要なスキルが生活に役立つ物だと無能扱いになる。
話を戻そう。銃の構想は、火薬が見つからないので10歳になる頃には諦めていたのだ。そう、軍事的なチート知識はとっくの昔に諦めていたのだ。
あれから時は流れている。もしかして、火薬が発見されているかもと調べてみたがそんなことは無かった。気が重い。帰りたくないと言うのが本音だ。
〜〜〜
俺は実家の客間で父と母の前にいた。2人は明らかにやつれていた。まぁ、無理もない、猫の手も借りたい状況なのだ。挨拶もそこそこで本題の話になった。
「アルよ、状況はさっき話した通り、良くは無い。あー、少し聞き辛いのだが、、、お前のスキルは魔物相手に使えそうか?」
来たか、まぁ、1番大事な話だんもんな。確認しないとだな。
「水が大量にあるところであれば、波乗りでそこそこのスピードで移動は可能です。ただ、波で攻撃したとしても、ダメージは与えられないかと、、、」
「ただ、最近発見したのですが、食べ物を温める事が出来るようになりました。あまり、役には立ちそうでな
父の目が輝やき、食い入るように話の途中で割り込んだ。
「なに!それは本当か?」
「あなた、もしかしたら」
両親は明らかに興奮している。何で?食べ物を温めるスキルが対魔物には役に立たないのに。
「実践してみてくれ」
母がご飯の残り物のパンとシチューとチキンを持ってきてくれた。
「分かりました。5分ほど時間を頂きます。」
マイクロウェーブを人に披露するのはこれが初めてだ。温かくなるまでの間がなんとも恥ずかしい。皆んな、無言で、動かない、残り物の食べ物を見つめている。今度はなんか適当に詠唱でも考えてみるか?
3分を過ぎた頃だろうか?微かに湯気が出始めた。
「おお!」驚きの声が上がった。
もうこんなもんだろう?
「父さん、母さん、出来ました。」
「これは食べても問題は?」
「もちろん、問題なく食べられますよ。」
父も母もそれぞれ一口づつ、食べた。
「本当に暖かいぞ」
「火を使わないで温めるなんて凄いわね!」
2人は興奮気味に感想を述べている。
なぜだ!意味がわからない。大したことない能力なのに。
「すぐに王様に謁見しに行こう!」
ええ〜何で?
食べ物を温めただけだよ。すぐ火にかければ、食べ物は簡単に温かくなるでしょ。アンポの木があれば誰だって火は簡単に着けられるのに。




